異例の廃止「妊婦加算」とは結局何だったのか

2018年4月に導入も、今年4月以降の廃止決定

ところが、妊婦加算導入後、本来の目的とは遠い形での加算があったことがSNS上で話題となり、批判が出ました。

例えば、「会計時に妊婦であることがわかって、負担が上乗せされた」「妊婦であることがわかったら、過去にさかのぼって徴収された」といった声があったほか、コンタクトレンズを作るために眼科で検査するなど、妊娠とは関係がないと思われる診療でも加算されるなどの事例があったようです。

すべての診療科で加算されるため、加算について事前の説明もなく、医者からも妊娠に関連する病気について特別なコメントがなかった事例も多いと思われます。患者がケアを受けたことを実感できなかったため、この加算は患者にとってわかりにくいものとなりました。

一方、薬の飲み方は、授乳期も注意が必要ですが、授乳期には加算がないほか、妊娠中に薬局で薬を処方してもらっても加算がありません。また、注意が必要なのは同じなのに、お腹が目立つようになるまで、あるいは自分で妊娠中であることを言わない限り、妊婦に対する特別なケアも受けられませんが、加算もされません。これもわかりにくい理由の1つとなっていました。

この加算分を妊婦本人が負担する必要があったことから、少子化対策に逆行するなどの意見が社会問題となり、自民党の厚生労働部会の働きかけのもと、わずか9カ月後の2019年1月に凍結されました。さらに、2020年2月、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会(以下「中医協」とする)で廃止されることが決定しました。

通常、診療報酬で見直しが必要な場合は、中医協が改定の影響を調査・検証したうえで、次の改定のタイミング(原則2年に1回)で修正しています。しかし、今回は、厚生労働部会の議論を受けて厚労大臣が期途中で凍結を発表し、最終的には廃止という異例の形だったと言えるでしょう。

周知不足だけが原因か?

妊婦加算の導入から廃止にかけては、中医協での加算要件に対する議論が十分ではなかったのではないか、新たな加算に対する医療機関や国民への周知が十分でなかったのではないか、診察時に患者に対する医師や医療機関の説明が不足していたのではないか、国民(患者)が医療機関の抱える問題や診療報酬に関心がなさすぎるのではないかなど多くの問題が露呈しました。

ここでは、医療費の負担のあり方と、診療報酬による誘導の限界について紹介したいと思います。

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