新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。人類はこれまでにもさまざまな感染症を経験してきたが、多くの人がこれまで以上に、“身近にある脅威”を実感しているのではないだろうか?
言うまでもない。感染者数は日々増え続け、決してひとごとでは片付けられない状況が続いているからである。
私たちは感染症について知らなすぎた
そしてもうひとつ、われわれはこれまで、感染症について知らなすぎたとも言えるかもしれない。感染症が怖いということは理解しているものの、気持ちのうえではどこか遠い存在でもあったということだ。
しかし、決してそんなことはないということを、今回の新型コロナウイルスによって実感させられたとも解釈できるわけだ。
だからこそ私たちは、改めて感染症について知る必要があるし、実際のところ、そう考えている人は少なくなさそうだ。
例えば、2年前に刊行された『感染症の世界史』(石 弘之 著、角川ソフィア文庫)にいま再び注目が集まっているのもその証拠だろう。こんな時期だからこそ、多くの人が正しい情報を求めているのかもしれない。
著者の石弘之氏は、朝日新聞社でニューヨーク特派員、編集委員などを務め、退社後は国連環境計画上級顧問、東京大学・北海道大学大学院教授、ザンビア特命全権大使などを歴任したという実績の持ち主。
アフリカ、アマゾン、ボルネオ島などで長く働いていたため、注意していたつもりでもさまざまな熱帯病の洗礼を受けてきたという。
だから、人間ドックの際に書類を渡されたときのエピソードは生々しくもある(不謹慎ながら、少し笑ってしまったのだが)。それは、検診の前にさまざまな質問への回答を記入しろと言われたときの話だ。
しかたがないので「マラリア4回、コレラ、デング熱、アメーバ赤痢、リーシマニア症、ダニ発疹熱各1回、原因不明の高熱と下痢数回……と記入して提出したら、「忙しいんですからふざけないでください」と、また叱られた。(「あとがき――病気の環境史への挑戦」より)
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