事実、石氏は終章において、今回の騒動を予言するかのような記述をしている。
ご存じのように中国の発展は著しく、経済力の向上にともなって13億4000万人を超える人口が国内外を盛んに動き回れるようになってきた。今回の騒動でも話題になったとおり、春節(旧暦の正月)前後にはのべ約3億人が国内を旅行し、年間にのべ1億人が海外に出かける。
したがって、急速に増えた大移動が、国内外に感染を広げる下地になっているということだ。
だからといって、それを差別的な感情に結び付けるのは望ましくない。石氏もまえがきに書いているが、地球に住んでいるかぎり、地震や感染症から完全に逃れることはできないのだから。
感染症は今後も影響を与え続ける
地上最強の地位に登り詰めた人類にとって、微生物はほぼ唯一の天敵だ。
しかし同時に、私たちの生存を助ける強力な味方でもあると石氏は言う。
だからこそ本書では感染症を通じ、その絡み合った歴史を環境史の立場から解説しているわけだ。
その考察は奥深く、時に難解でもあるが、ここに書いてきたような人類との“関係性”をも再確認させてくれる。
連日続く報道にただおびえるだけでなく、しっかりとした知識を身に付けるために、読んでみて損はない。
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