東京都の新型コロナウイルス感染者が、急激に増えはじめた。
それまで、ほぼ一桁で推移していた感染者が、3月23日に16人となり、翌24日は17人、そして25日にはその倍を超える41人が感染していたと発表。26日には47人の感染が確認され、4日連続で過去最多を更新している。27日には、さらに40人が報告され、これで累計でも299人となり、それまで感染者がもっとも多かった北海道を抜いてしまった。
小池百合子都知事は、40人を超える感染者を出した25日に急きょ、記者会見を開き、「いまが感染爆発の重大局面にある」として、都民に夜間の外出と、週末の不要不急の外出の自粛を求めた。これにあわせて隣接する4県にも往来をしないように求め、各県知事がこれに応じている。
すると都内では、たちまちスーパーに買い溜めしようとする都民が殺到。同じ会見で小池知事が、感染しやすい換気の悪い「密室」での、人の「密集」、「密接」の「3密」を避けるように呼びかけたのに、スーパーをその現場にしてしまった。食料供給が滞るはずもなく、必要に応じた日々の買い物は不要ではなく、むしろ、買い溜めこそ不要というのに。
なぜ五輪延期決定後に東京で感染者が急増?
私は、SARS(重症急性呼吸器症候群)が蔓延した当時の現場取材の経験を踏まえ、今夏の東京オリンピックの開催は、もはや不可能だと書いた。仮に7月までに国内で感染が収束したとしても、世界がそんな状況ではないと思うからだ(『パンデミック宣言で「五輪開催」も無理筋な理由』)。
そのとおり、24日の安倍晋三首相とトーマス・バッハIOC会長との電話会談で、オリンピックの延期が決まった。その翌日のタイミングで、東京から連日40人を超す感染者が続出するようになったのは、少し出来過ぎている。
しかし、思い返してみれば、小池知事が「感染爆発の重大局面」を宣言したちょうど4週間前の2月26日の水曜日には、安倍首相が政府の新型コロナウイルス感染症対策会議で、今後2週間の大規模なイベントの自粛を要請して、その日のコンサートが中止になるなどしていた。しかも、こう強調して。
「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要である」
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