しかるにCLOとはその昔、サブプライムローンを世界中の投資家に売りつけたCDO(債務担保証券)とそっくりな仕組みである。ハイリスクの社債も一部入っているけど、一度に全部が悪くなるということはないでしょう。だからトータルでは安全なんです、という説明がされている。しかるにサブプライム問題が浮上した時には、CDOの値段がつかなくなって金融市場が大混乱したものだ。
実は、ハイイールド債市場の約15%は、エネルギー関連企業向けだと言われている。ゆえに石油価格のさらなる下落は、シェール事業者の経営悪化を招き、「第2のサブプライム問題」を招きかねない。コロナウイルスだけではなく、石油安が金融不安の引き金となる、というのはリアルな2次災害のシナリオと言えるだろう。ゆえに石油価格がどのへんで持ち直すか、あるいは産油国の間で再び減産に向けての合意が成立するかどうかも、個人投資家としては気を付けたいところだ。
いよいよ「QE4」が始まる
3点目に着目したいのは、米連銀の「量的緩和政策」である。
今回、ジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は3月15日夜に緊急会合を開き、短期の政策金利であるFF金利を1.0%下げて0~0.25%とした。もともと下げる余地が1%しかないところを、思い切って全部下げてきた。さらにフォワードガイダンスとして、「新型コロナ乗り切ったと確信持つまで金利をゼロ近辺に維持」することをコミットした。いやもう、お見事としか言いようがない。「切れるカードは全部切りました。あとはトランプさんからどんなに嫌味を言われても、『われわれの仕事は既に完了です』(後は連邦政府の仕事でしょ)」と言えてしまうのである。
だったらもう、米連銀に打つ手はなく、これ以上彼らの動向に関心を持つ必要ないのだろうか。いや、そこでまだ残っているのが「量的緩和政策」(QE)なのである。
パウエル議長は、「目先数か月で米債の保有額を少なくとも5000億ドル、MBS(住宅担保位債券)の保有額を少なくとも2000億ドル増加させる」と言明した。いろいろ理屈はあるけれども、これは「QE4(量的緩和第4弾)が始まる」と解釈していいだろう。幸いなことに、米連銀のバランスシートのデータは毎週ちゃんと公表されている 。
Fed(米連銀)のバランスシートは、2008年以前には約8000億ドルしかなかった。それが3次にわたる量的緩和政策によって膨張し、ピーク時には4.5兆ドルにまで達した。これを2017年秋から徐々に引き下げ、昨年夏には3.7兆ドルまで下がっていたのだが、やっぱり資金供給が必要だということになって、直近の3月9日には4.3兆ドルまで回復している。ここに国債とMBSを加えて、これから最低でも0.7兆ドルを積み上げることになる。最終的には5兆ドルを越えて、史上最高を更新するはずである。
今は”Cash is King.”とばかりに売りが売りを呼ぶ展開で、世界的にドル資金が不足している。それこそ究極の安全資産、金(ゴールド)までが売られている。各国の中央銀行がせっせとドルを供給しているのに、今回は「有事の円買い」どころかむしろ円が安くなっている。それでも量的緩和政策が続くからには、どこかでドル安への転換点が来るはずである。つまり為替はどこかで円高ドル安に転じる。この点もどうかご用心召されよ。
まとめると、筆者が考えるチェックポイントは、①国債金利、②石油価格、③米連銀のバランスシート、ということになる。何しろ今はリーマンショック以来の波乱相場だ。くれぐれも読者諸兄の財産が、棄損されないことをお祈り申し上げる(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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