東京都心の航空機「低空飛行」に募りまくる不安 渋谷付近は高度750m、騒音や落下物は大丈夫か

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3月上旬の羽田空港。すべての航空会社スタッフがマスクを着けていた(撮影:梅谷 秀司、デザイン:小林 由依)

林立する高層ビルやタワーマンションをかすめるように、ジェット旅客機が低空を飛ぶ――。新宿や渋谷、品川などの東京都心部で、そんな光景がもうすぐ日常のものとなる。3月29日から運用が始まる、羽田空港の「新飛行ルート」だ。

訪日外国人観光客旅行者数の拡大を前提として国が打ち出した、羽田空港の国際線増便。着陸の経路を見直すことで滑走路の運用効率を上げて発着回数を増やし、これまで年間最大6万回だった国際線発着数を9.9万回まで引き上げるための方策が新飛行ルートだ。都心低空を飛ぶのは年間の約4割という南風の場合。好天時、新宿上空では高度約1000m、渋谷付近は約750mを飛行する。

運用時間帯は午後3時~7時のうち3時間程度で、そのほかの時間帯は従来のルートを使う。ただ、1時間当たりの飛行回数は、A滑走路への着陸が最大14回、C滑走路は30回。両者を合わせると毎時最大44回になる。1日中ではないとはいえ、ラッシュ時の山手線を上回る頻度で、巨大なジェット旅客機が都心部に暮らす人々の頭上を舞うことになる。

『週刊東洋経済』3月23日発売号は「羽田空港クライシス」を特集。新型コロナウイルスが世界のエアラインの経営に打撃を与えている中で、東京都心の低空飛行をはじめ、日本の「空の玄関口」の現状と課題を総点検した。

園庭の子どもが泣き出す

「ゴゴゴゴゴ……と地響きのようなものすごい音がしたのであわてて外に出たら、建物の上を今まで見たことのないくらいの低さで飛行機が飛んでいて。園庭にいた1歳9カ月の子が泣き出してしまい、ほかにもおびえて泣き止まない子がいました」。港区白金の保育園園長、東美智枝さんは、実際に航空機が新飛行ルートを飛んだ「実機飛行確認」の際の様子をそう語る。

今年1月末から2月12日まで、北風時ルート、南風時ルートともに7日間行われた実機飛行確認。保育園付近は、C滑走路に着陸する航空機が高度約600mを飛行するエリアだ。ちょうど節分の時期に飛来するようになった航空機の轟音に、外で遊んでいた子どもたちは「鬼の音がする」と怖がって室内に戻ってしまったという。

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