東京都心の航空機「低空飛行」に募りまくる不安 渋谷付近は高度750m、騒音や落下物は大丈夫か
都心部を飛ぶ新ルート案が浮上したのは2014年7月。国土交通省による、首都圏の空港機能強化を技術的に検討する小委員会の中間とりまとめにおいて、羽田空港の1時間当たりの離発着回数を現行の80回から90回に増やす方策として提案された。従来の着陸経路、とくに南風時のルートの場合、滑走路の配置の都合から着陸機と離陸機の競合が発生するため、1時間当たりの離発着回数を83回以上に増やせないと判明したためだ。
これまで羽田空港の飛行ルートは、陸上の騒音をできる限り抑制するため、東京湾上を最大限に活用するとの考え方で設定されてきた。それだけに、新飛行ルート下の住民らがもっとも懸念するのは、やはり騒音問題だ。
国交省は新飛行ルートの資料に、大型機(B777―300)の場合、高度約600mだとルート直下の騒音は約74デシベル、高度約450mだと約76デシベルと記している。だが、実機飛行確認の際の測定では、高度750m~600m程度を飛び、ルート直下から離れている広尾中学校(渋谷区)で最大79デシベル、高度約600mの高輪台小学校(港区)で最大81デシベルを記録した。さらに大きいのは南風時にB滑走路から離陸する際の騒音で、国立医薬品食品衛生研究所(川崎市)での測定結果は最大で94デシベルに達した。
東さんは、国交省が開いた説明会で航空機の騒音シミュレーターも体験した。「でも、実際の音はそんなものではなかった」。保育園の看護師で、海上自衛隊下総航空基地(千葉県)の近くに住むという根本敦子さんも「(基地で)自衛隊機のタッチアンドゴーの訓練などがあるとすごくうるさいと思っていたけど、あの比じゃなかった」と語る。
実機飛行確認で、改めて新ルートの騒音問題に気づいたという住民も多い。港区内に住む大学教授の男性は実機飛行が始まるまで新ルートについてほとんど知らなかったが、騒音と機影の大きさに驚き、区議会に新ルートの再検討を求める請願を提出した。「区内には数多くの教育機関がある。いくら訪日客を増やすためといっても、教育環境をおろそかにしていいのか」と怒りを口にする。
拭えない落下物の懸念
騒音とともに、新ルート下の住民が不安視するのが航空機からの落下物だ。港区の住民団体「みなとの空を守る会」共同代表の増間碌郎さんは、「(新ルート運用開始時間の)午後3時といえばちょうど子どもたちの下校時間。人口密集地だから人に当たる可能性も高くなる。小さなビス1個といえども当たれば大変」と懸念を示す。
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