東京都心の航空機「低空飛行」に募りまくる不安 渋谷付近は高度750m、騒音や落下物は大丈夫か

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国交省のデータによると、全国主要7空港において、空港到着後の機体チェックなどで部品がなくなっていた場合の報告数を示す「部品欠落情報」の件数は2018年度で489件。大半は10g未満の部品だが、1kg以上の部品も8件ある。これはあくまで部品欠落の報告数だが、実際に航空機から部品が落下したトラブルも、2008年~2018年度に23件起きている。

国交省は2017年、部品欠落の報告制度を海外の航空会社にも広げ、さらに2018年9月には「世界的に類を見ない」という落下物防止対策基準を制定。国内航空会社と日本に乗り入れる海外航空会社に義務づけるなどの対策を講じている。「部品欠落の報告の精度は上がってきた」(国交省航空局ネットワーク企画課)というものの、対策が始まって日が浅いだけに、その効果はまだはっきりしない。

コロナ騒動で需要減でも新飛行ルートは実施へ

騒音や落下物への懸念とともに、新飛行ルート下の住民には計画を推進する国への不信感が根強い。着陸時の「降下角度」も懸念点として指摘されている。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、航空便は減便が相次ぐ。住民団体グループ「羽田問題解決プロジェクト」は3月12日、新飛行ルート運用の一時見合わせを求める要請書を赤羽一嘉国交相宛てに提出した。同団体の大村究代表は「当面の航空需要は新ルートを一時的に立ち止まって考えることが可能な状況」と指摘する。

一方、菅義偉官房長官は前日11日の定例会見で、新飛行ルートについて「予定通り今月末から実施する」と述べた。航空業界が需要の急減にあえぐ中、国際線増便のための施策である新飛行ルートの運用が始まろうとしている。

『週刊東洋経済』3月28日号(3月23日発売)の特集は「羽田空港クライシス」です。
小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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