ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり

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ファナックは黄色いロボットと機械で抜群の存在感を放ってきた(記者撮影)

富士山のふもと、山梨県忍野村。目の前に広がる工場群の外壁からロボット、社用車、従業員の制服などすべてが黄色に染まっている。これを戦いの色としている「黄色の最強軍団」がファナックだ。

目立つのはコーポレートカラーだけではない。工作機械の「頭脳」である数値制御(NC)装置の世界最大手であり、産業用ロボットでも世界4強の一角を占める。まさに自動車などあらゆる製造業を支える大黒柱だ。さらに一時は営業利益率が4割を超え、自己資本比率は約9割と超高収益・好財務の優等生企業と持ち上げられてきた。

しかし、業界では最近、「ファナックが普通の会社になってきている」と話題だ。それが象徴的に表れたのが昨年12月に開かれたロボットの展示会だった。ファナックが展示ブースの端で、黄色ではなく「白いロボット」を展示したのだ。

かつての利益率には戻らない

このロボットは安全柵を必要とせず人間と同じ空間で作業できる協働ロボット。食品業界などロボットの導入事例が少ない市場に向け、より高い扱いやすさを訴求しているのが特徴だ。

きゃしゃで丸みのある形状が特徴的な「白いロボット」(記者撮影)

ファナックはこれまで自動車のプレスや溶接などに使われる大型で頑強なロボットでシェアを獲得して稼いできた。

だが、今回は食品製造など向けに清潔感のある白色に変え、今後は積極的にアプローチしてこなかった小粒な案件も取りに行くつもりだ。あるロボットメーカーの開発者は「ファナックがついに協働ロボットに本気を出してきた」と驚く。

ファナックが色を変えてまで協働ロボットに向かうのは業績の落ち込みへの危機感があるからだ。かつてはキーエンスに次ぐ驚異的な利益率だったが、2019年度の予想は15.9%と業界平均程度まで落ち込む見通しだ。

米中貿易摩擦や自動車市場の低迷の影響を受けたとはいえ、ファナックの山口賢治社長は、10月のアナリスト向け決算説明会で「以前ほどの利益率はもう出ない」と発言。社員からも「ファナックが高収益の会社なんて過去の神話」という声が出る。

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