株価不安の今、「有価証券報告書」が実に面白い 内容寒いキーエンス、火葬場がお宝の廣済堂
企業の業績を表す“通信簿”ともいえる「決算短信」。その決算短信から1カ月半~2カ月後に公表される「有価証券報告書」(有報)には、決算短信には掲載されない、実に多くの情報が掲載されている。
有報には明確にその会社の個性が表れる。経営者が自らの言葉で投資家に語りかけるような説明文になっている会社もあれば、「わが国の経済は~」で始まるお題目が大半を占め、会社に関する具体的な説明はほんのわずかという会社もある。
不思議なことに、縁もゆかりもない会社同士なのに、“ほとんど同じ文章”に出くわすことがある。宝印刷やプロネクサスなど、かつて有報の印刷業務を手がけていた会社は、入力すれば有報が出来上がるソフトを提供している。そのソフトによって、サンプルとして入れている例文をそのまま修正せずに使う、横着な会社が一定程度存在するからだ。
『週刊東洋経済』の11月16日号(11月11日発売)では、「株式投資・ビジネスで勝つ 決算書&ファイナンス」を特集。有報の読み解き方をはじめ、株式投資に不可欠な30のノウハウを紹介している。
優良企業でもIRに後ろ向きな「3兄弟」
最近何かと話題のキーエンス。日本が世界に誇る特殊センサーメーカーである。2019年3月期の有報を見ると、従業員の年間平均給与は2110万円超(平均年齢35.8歳)。前期の営業利益率は54.1%で、時価総額ではソフトバンクグループやソニーを抜き、4位に浮上しているほどだ(2019年11月12日終値時点)。
が、黙っていても世界中から機関投資家が群がってくるほどの好業績ながら、IR(投資家向け広報)には後ろ向きなことで知られる。近年ではだいぶ姿勢が軟化しているが、かつてはホームページ(HP)上に有報はもちろん、決算短信や適時開示も直近のものしか掲載しない会社だった。
あまりのかたくなさゆえに、ファナック、SMCとともに、“頑固3兄弟”なるあだ名を付けられていたほどだ。
そのキーエンス、柔らかくなってきたとはいえ、いまもIRに積極的ではないことを、同社の有報は物語っている。まずはページ数。9兆円もの時価総額の会社でありながら、総ページはわずか62ページ。海外投資家と積極的に対話をしようという気はさらさらないのか、グローバルカンパニーでありながら会計基準は未だに日本基準だ。
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