株価不安の今、「有価証券報告書」が実に面白い

内容寒いキーエンス、火葬場がお宝の廣済堂

今年1月から4月にかけて、ベインキャピタルが買収を試みたものの、創業一族の反対や村上ファンドの参戦で頓挫したのが、廣済堂だ。

廣済堂の稼ぎ頭が本業の印刷事業や出版事業でなく、子会社で手がける火葬場事業であることは決算短信でもわかるだろう。が、火葬場の資産価値を知る端緒となる情報は、2019年3月期の有報をめくると出ている。

主要な設備の状況にある国内子会社、東京博善(本社・千代田区)が持っている斎場に注目してほしい。期末で土地や建物、機械装置など合計の帳簿価格は296億6700万円。このうち土地の簿価は92億7400万円で、面積は5万6000㎡(約1万6900坪)という情報が載っている。

土地の簿価が92億円ということは、平均の坪単価は54万円程度にすぎない。東京博善のHPを見れば、斎場7カ所の住所が載っており、都内にあるというだけで、どれだけ安い簿価で所有しているかが判明する。

より正確な含み益をはじくには、各斎場の土地面積を住宅地図や登記簿謄本で調べたうえで、そこの路線価などと照らし合わせ、時価と簿価の差額を計算する必要がある。ただ少なくとも有報で多額の含み益をある程度類推することはできるのだ。

まるで“不平等条約”なスタバのFC契約

ほかにも有報では興味深い欄もある。「経営上の重要な契約等」には、その会社の存続に関わりかねない、重要情報が記載されている場合もある。

スタバジャパンはアメリカ本社の意向で2015年に上場廃止となった(撮影:梅谷秀司)

スターバックス コーヒージャパン(スタバジャパン)は好例だ。スタバジャパンは、サザビー(現・サザビーリーグ)とスタバのアメリカ本社の合弁で1995年に設立され、2001年にナスダックジャパンに上場、2015年3月に上場廃止になっている。

スタバジャパンの有報の「経営上の重要な契約等」には、上場当初から、本社とのフランチャイズ契約の条項がビッシリ記載されていた。

本社との間では年度ごとの出店ノルマも決められており、達成できなければ本社はスタバジャパンとのFC契約を解除できる条項が入っていた。また、本社やサザビー以外の第三者が発行済み株式総数の2割以上を本社の同意なく取得したらFC契約を解除できる条項もあった。

とくに重要だったのは、本社との間のFC契約の期間が上場から20年間の契約になっており、契約期間終了時に“自動更新の定めがない”、とする部分だ。更新してもらえなければ、スタバジャパンは事業を継続できず、廃業を余儀なくされる。どんなに業績が好調でも、20年後には突然廃業を余儀なくされるかもしれない、そんな企業が上場審査を通ったのである。

案の定、本社は「アメリカ本社の完全子会社にならなければ更新契約に応じない」と言い出し、スタバジャパンを完全子会社化してしまった。好調な業績と裏腹に、事業の根幹たるFC契約は脆弱そのものだったといえる。

そんなことにも気づくことができるのも有報の面白いところ。一見、退屈そうに見えるが、その会社の素顔が見える有効なツールなのだ。

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