16日の日銀金融政策決定会合は当初18~19日の予定だったが、前倒しで行われた。「企業金融支援のための措置」や「CP・社債等の買入れの増額」を中心とした資金供給の実施とETF・J-REITの買い入れ増額といった「小粒」な対応にとどまったが、緊急経済対策との「協調」が検討されれば、「量」の面で一段の金融緩和策が行われる可能性がある。
副作用の観点からマイナス金利の深掘りのハードルが極めて高い日銀においては、消去法的に「利下げ」よりも「量的緩和」が議論の中心になりやすい。その場合、一時的な財政拡張に合わせた国債買い入れの増額が検討される可能性がある。開放経済における財政拡張は自国通貨高要因となるため、政策効果が一部クラウディング・アウトされてしまうというマンデル=フレミングモデルの考え方を重視すれば、日銀が買い入れによって政府と協調することは正当化される。
マネタイゼーションにまた一歩近づく
しかし、日銀による国債の直接引き受け(マネタイゼーション)にまた一歩近づくことになることには注意が必要である。財務省によって発行された国債を金融機関から日銀が買い入れるという方法は現在と変わらないとみられるが、財政拡張に合わせて日銀が買い入れる量を増やすということは、直接引き受けにかなり近いと判断されるだろう。
このような政策は、短期的には金融・財政の「協調」をアピールしやすいという面もあるが、中長期的には中央銀行の独立性の低下や、財政規律の弛緩という問題を内包する政策である。
すでに米国では、FRBが量的緩和政策を発表した数日後に、トランプ大統領が国民に対して現金給付を行う方針を発表したことを受け、「ヘリマネ」(中央銀行が刷ったお金を市中にばらまく政策「ヘリコプターマネー」の略)ではないか、と指摘されている。
日本においても、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が一段と大きくなり、金融・財政の「協調」が必要との議論が強くなれば、選択肢となるだろう。その場合、日銀の金融政策がまた一歩「変質」していく可能性が高くなる。「国債暴落」のリスクが再び議論されることなるのか、議論の行方に注目する必要がある。
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