10日に発表された日本経済研究センターのエコノミスト調査(筆者も回答者の1人)によると、日本の実質GDP(国内総生産)成長率のコンセンサス予想は、2020年1~3月期は前期比年率でマイナス4.06%、4~6月期は同マイナス11.08%と大きく落ち込むが、7~9月期はプラス5.11%と、プラス成長に回帰するというものになった。
もっとも、20年10~12月期はプラス3.90%、21年1~3月期はプラス1.74%と、19年7~9月期のピークには戻らない水準で伸び悩むという予想となった。
これは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による影響(以下、新型コロナ・ショック)は、感染の終息が徐々にしか期待できないことや、当面は再拡大への警戒感が続くためインバウンド消費の戻りが鈍いことが想定されることなどが反映されているとみられる。
終息後は個人消費、可処分所得がカギに
一部では、今回のショックは東日本大震災時と比較して資本ストック(既存の設備)が毀損していないためにV字回復が可能だという見方があるが、筆者はまったくの逆だと考えている。東日本大震災の後はむしろV字回復した。これは、当時は毀損した資本ストックを修復するという明らかな需要があったからである。毀損した設備を修復するだけだったとしても、GDPを押し上げることになる。
一方、今回は個人消費を中心とした需要が回復しなければ、V字回復とはならない。個人消費を抑制している新型コロナウイルスの感染の終息がゆっくりにしか進まないのであれば、GDPの回復も緩やかだろう。また、その間に雇用が失われて個人消費を持ち上げる「原資」である可処分所得が減少すれば、回復のペースはV字から遠のいていく。
今回のコラムでは、GDP成長率と失業率の関係を考察することで、今後予想される失業率の上昇幅を推計した。
新型コロナ・ショックは「景気が落ち込む角度は東日本大震災級、落ちる深さはリーマン級」といわれている。セーフティーネットの確保などの各種政策対応が間に合わないリスクや、さまざまなボタンの掛け違いによって経済の落ち込み以上に失業者を増やしてしまう可能性があるため、注意が必要である。急激に資金繰りが悪化している中小企業が多い中、金融機関の手続き上のキャパシティの限界も指摘されている。
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