苦境下の「人気観光地」がいまするべきこと

『観光公害』著者が説く観光地の現状と対策

以前は多くの外国人観光客でにぎわった京都の伏見稲荷も、新型コロナウイルスの影響を受けて閑散としている(編集部撮影)
つい最近まで、訪日観光客の急激な増加による公共交通機関の大混雑やゴミ・騒音の問題など、いわゆる「オーバーツーリズム」に悩まされてきた人気観光地。それが一転して、苦しい状況に陥っている。
新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的に移動が制限され、観光客が蒸発。収束の見通しが立っていないからだ。
このピンチを、今後のオーバーツーリズム解消のチャンスに変える戦略はあるのか。「コロナ後」を見据えて、観光地はどうあるべきか。
『観光公害』(祥伝社新書)の著者で、城西国際大学観光学部の佐滝剛弘教授に聞いた(インタビューは4月6日に実施)。

今回は戦後初めて直面する大打撃

――現在の観光地はどのような状況ですか。

3月下旬に訪れた京都と広島はホテルがガラガラで、外国人の姿もほとんど見かけなかったが、日本人の若い人がけっこういた。卒業旅行で海外にいけなくなった学生などが、「仕方ないから京都に行くか」と訪れていたのだろう。ハワイ気分を味わいたいのか、石垣島や宮古島もそこそこ混雑していた。

すべてが真っ暗な状況ではなく、地域によって多少の差があった。ただ、4月7日に緊急事態宣言が発令されて、様相がガラッと変わりそうだ。

今回のコロナ危機では日本人が旅行しないうえ、海外からも観光客が来ない。修学旅行需要や出張などのビジネス需要もない。しかも、いつ収束するかまったくメドが立たない。前例のない危機だ。東日本大震災やリーマンショックのときもひどかったが、全世界的に旅行ができなくなったわけではない。今回は、戦後初めて直面する大打撃だ。

――海外の有名観光地も、打撃を受けているのでしょうか。

アメリカやヨーロッパの多くの都市では、完全にロックダウンしている。交通機関は減便され、ありとあらゆる施設が閉まっている。欧米だけでなくアジア各国や、マチュピチュやナスカの地上絵があるペルーをはじめとする中南米など、観光業で成り立っている国でも感染が拡大してきて、日本以上に悲惨な状況になっている。

一方、海外では雇用や賃金を保障するなど国の支援が大きいので、観光業に携わる人の苦境度で言うと、見た目ほどではないかもしれない。日本では旅館や観光バス業界など、明日つぶれてもおかしくないところがたくさんある。観光業に従事する個人への影響度は、日本のほうがひどいかもしれない。

日本はつぶれるところがいくつか出てくる可能性があるので、もしかしたら回復は遅れる。日本は完全に観光客が止まっているわけではないが、実は海外より危ないかもしれない。

次ページ薄利多売の観光業界
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 憧れから一歩前へ! キャンピングカーのある日常
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • iPhoneの裏技
トレンドライブラリーAD
人気の動画
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
京セラのガラパゴススマホ「トルク」がたどり着いた境地
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
「雑談で笑いを取れない人」が知らない基本原則
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT