苦境下の「人気観光地」がいまするべきこと 『観光公害』著者が説く観光地の現状と対策

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――経営が厳しくなっているところが多そうですね。

佐滝剛弘(さたき・よしひろ)/1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部(人文地理)卒業。NHKディレクター、京都光華女子大学キャリア形成学部教授などを経て、2020年4月より城西国際大学観光学部教授。著書に『観光公害』(祥伝社新書)、『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)など

(新型コロナウイルスが流行する前は)人がたくさん来て、儲かっているように見えていたが、観光業は全体的に薄利多売だ。だから少しの期間でも、観光客が来なくなると苦しい。宿泊施設も運送業も、レジャー施設も相当厳しいのではないか。

例えば、JAL(日本航空)やANA(全日本空輸)などの基幹となる交通インフラを助けるのは理解を得られやすいと思う。しかし、税金で民間のホテルやレジャー施設を助けることになると、抵抗がある人は少なくないと思う。しかし、そこで働いている人たちは、ぎりぎりの賃金で生活をしのいでいる人が多く、このまま助けがないと、多くの人が苦境に陥るだろう。

海外では大事にされている観光産業

――日本と海外で、公的支援に対する考え方の違いがあるのでしょうか。

海外の多くの国では観光業の位置づけが高い。GDPに占める割合も大きく、観光産業が大事だという認識が国民全体に共有されている。欧米のほとんどの国では観光は産業の大きな柱だし、文化の保護や活用という観点からも大事にされている。

日本では、自治体の観光セクションは教育や福祉などと比べても地味な部署で、けっして花形の部署ではない。国の省庁においても「文化省」も「観光省」もなく、文化庁と観光庁どまりだ。つまり、役所の中でも一段下に見られている。製造業と同じぐらい大事な産業だととらえている人は少なく、こういう危機のときに公的に支援してもらえる確率も低い。

――拡大を続けてきたクルーズ船も、イメージが悪化して打撃が大きそうです。

船内ですべて楽しめるというクルーズ船の良さが裏目に出た。限られた空間だからこそ、感染が拡大してしまった。ダイヤモンド・プリンセス号の感染拡大は海外のどこでもトップニュースになって、「クルーズ船はこういうときに弱い」ということが、衝撃的な映像として世界に流れてしまった。

あのインパクトは当分消えないし、コロナが収束したとしても、クルーズ船に以前のように観光客が戻るかどうかはわからない。

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