苦境下の「人気観光地」がいまするべきこと 『観光公害』著者が説く観光地の現状と対策

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――外国人観光客向けになってしまった施設は、今後どのような対策が必要なのでしょうか。

大阪の黒門市場や京都の錦市場は、ここ10年で完全に外国人のための商店街になってしまった。地元の人は「もう行きたくない」と言っている。行っても買いたいものが手前に置いていない。日本人も外国人も一緒に楽しめる場であるべきで、そこで交流が生まれればいい。今は外国人向けに偏ってしまって、日本人の客を失っている。

外国人しか行かない店に行っても、本来面白くないはずだ。私たちも海外に行って、地元の人がおいしそうに食べているレストランで食べるから楽しいのであって、周囲が観光客だけのお店に行っても、本物を味わったことにはならない。本当のおもてなしを私たちはもう一度取り戻さないといけないと思う。

「おもてなし」の掛け声を背景に、観光地では英語と韓国語、中国語を併記した4カ国語で表示するところが多いが、これもやりすぎだ。私たちがパリやロンドンに行って日本語の看板が至る所にあっても、決して楽しいとは思わない。片言の言葉で苦労しながら道を尋ねたり、料理を注文したりするのが旅の楽しみだと思う。

インバウンドは最大の安全保障

――真の意味で旅行客に喜んでもらうために、どうしたらいいか考えるべきだと。

その通り。厳しい指摘もしたが、外国人が日本にたくさん来ることには基本的に賛成だ。日本の文化を知ったり、日本に来たときに親切にされたりした経験は、日本のファンになってもらうという意味で、最大の安全保障になる。一度でもその国で親切にされたことがある人、おいしいものを食べた人、豊かな文化に触れた人が、その国と戦争したいと思うだろうか。観光というソフトパワーは、軍備の整備などよりもはるかに日本の平和に資する。

日本人に親切にしてもらった、お店で現地の人と親しく話をした外国人観光客が、たくさん日本に来て、素敵な思い出を胸に戻っていく。そういう人が中国や韓国、東南アジア、ヨーロッパに増えることは、間違いなくいいことだ。だからこそ、日本人も海外にたくさん行ってほしいし、海外の人も日本に来てほしい。

観光業の従事者は、当座をしのぐことで精いっぱいかもしれないが、コロナ後を見据えたリスクの分散を考えておく必要がある。そうしないと、また同じ危機がやってきたときに生き残れない。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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