苦境下の「人気観光地」がいまするべきこと 『観光公害』著者が説く観光地の現状と対策

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――コロナが収束した後、観光客はすぐに戻るものでしょうか。

少なくとも半年ぐらいは、宿泊や交通も含めて相当厳しい状況が続くだろう。夏休みも、国内外を自由に旅行できるかどうか。相当難しいと思う。

仮に6月に収束宣言が出て、イタリアやスペインに行きたいとしても、「家族が反対する」「会社から許可が出ない」ということが起こりうる。

収束したときに、旅行にお金をかけられる人がどれだけの割合になるかも問題だ。日本では不景気になると、真っ先にフリーランスや契約職員、アルバイトが切られて、正社員だけが守られる。今回の危機で「自分はクビにならない。ボーナスは多少下がるかもしれないけど、生活できなくなることはない」と安心している層と、すでに仕事がなくなって困っている層と、ここ十数年で進んだ社会の二極分化によって、完全に分かれてしまっている。

経済的に困っていない大企業の人は、収まればまたすぐに海外や国内に旅行するだろう。だが、経済的なダメージを受けた人はお金が多少入っても、まず家賃や子供の学費に回さなければいけない。旅行は二の次、三の次になる。コロナが収束したとしても、V字回復するかどうか、確証はない。

人は少しでも余裕ができれば、旅行に行きたいものだ。ひとたび旅の楽しさを知った人は、観光客として戻ると思う。ただ戻り方が、場所や人々の経済的な余力によって、まだら模様になるのは間違いない。

日本の魅力がなくなったわけではない

――インバウンドの今後の見通しは?

長期的なトレンドとしては、日本に来たいという人はこれからも絶対に増える。中国人の中にはまだ日本に来られない所得層の人がたくさんいて、これから豊かになっていく。東南アジアもそうだ。

今は一時的に落ち込んでいるが、これを機に日本に誰も来なくなるということには絶対にならない。日本の魅力がなくなったわけではないので、これからもラーメンやすしを食べに、あるいは桜や紅葉を見に観光客は来る。

ただ、数さえ来ればいいということを繰り返してはいけない。なるべく違う観光地に誘導するような施策をもっと強くして、日本全体で受け入れるようにしないといけない。「訪日客が戻ったはいいが、また京都は大混雑している」という事態にするべきではない。

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