苦境下の「人気観光地」がいまするべきこと 『観光公害』著者が説く観光地の現状と対策

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――博多や長崎といったクルーズ船が寄港していた観光地も、影響を受けているのでしょうか。

もちろん一定の影響はあるが、クルーズ船は一見華やかに見えて、実は寄港先にあまりお金を落としていない。夕食を食べてお酒を飲み、宿泊施設に泊まることが最も観光地にお金を落とすのに、それら全部を船の中で済ませてしまう。しかも一気に何千人も来て、渋滞を起こしたりお店に殺到したりして、すぐに引き揚げていく。究極の「一見さん観光」だ。

クルーズ船が来るのは悪いことではないが、力を入れすぎていた観光地もある。1週間に1隻ぐらい来るならまだしも、自治体の予算で港を整備して2隻も3隻も同時に泊められるようにしようとする港もあるが、オーバーツーリズムを引き起こしかねないリスクがある。

大事なのはリスクの分散

――いわゆる「オーバーツーリズム」になっていた観光地が、閑散としている今だからこそできる対策はありますか。

今回、早々と倒産した事業所の多くは、お客さんを中国人に絞っていたところ。そのため、コロナの蔓延がまず中国で始まったために影響を受けた。もう少しいろんなお客さんを受け入れたり、半分は日本人のために部屋をあけておいたりしたところは、急激にひどくはなっていない。

中国人の団体旅行客と契約したら部屋が毎日100%埋まるので、経営者にとってはある意味楽だった。それに乗っかったところが、最初につぶれた。今回はコロナだったが、2019年は韓国との関係悪化によって韓国に頼っていた九州などの観光地の一部は打撃を受けた。そういったリスクは今後も起こりうる。

――リスクの分散が大事だと。

今回はすべての国で移動が制限され、国内の客も来られないので、分散していてもダメだったかもしれないが、少なくとも倒産を遅らせることはできた。ブームに乗って、そこだけをターゲットに商売をするのは危なかったし、そのことがオーバーツーリズムを引き起こしていた。日本人の観光客が来ても、「外国人ばかりじゃないか」と不満を抱かれ、敬遠され始めていたところが実際に各地にあった。

これだけ長期間休業することは、平常時ならやりたくてもできない、天から与えられた「シンキングタイム」といえる。各施設が今後どういう戦略で臨んでいくのか、もう一度考え直す機会だ。リスクの分散に加え、先延ばしにしていた安全面などの対策が打てるかもしれない。

まだ危機の途中なので、どうしたら成功するのかはわからない。いったん収束した時点できちんと検証しないといけない。今回のケースが今後の教科書になる。

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