「自粛」とのジレンマで緊急経済対策は効果薄い 政府は米国や日銀との「協調」をアピール

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いわゆる「バラマキ」にあたる現金給付が経済(GDP成長率など)に与える影響は「即効性はあるが、効果は限定的」とされる。

内閣府の計量経済モデル(18年度版)によると、国民の所得を直接増やす政策がGDPを押し上げる効果は、公共投資などを含む政府支出の増加による効果の半分程度である(図)。

さらに、今回は各種「自粛」が行われており、「バラマキ」による個人消費の拡大は期待できない。現金給付を中心とした政策になる場合、給付された現金は消費に回らずに貯蓄されるのではないか。貯蓄できれば先行き不安の軽減につながる面はある。

だが、「即効性もなく、効果も限定的」となる可能性が高いということだ。「経済対策」という名前を付けたとしても、実態は「不安対策」といったところであるし、新型コロナウイルスの感染拡大という本当の「不安」を解消できるわけではない。

本格的な成長支援策は、感染拡大の終息後

他の政策についても、中小企業向けの減税措置はそのほとんどが資金繰り改善を目的としたものとなるだろう。これは景気を悪化させないための措置であり、成長率を押し上げるものではない。

4月時点では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響がどのようなセクターにどの程度の規模で生じているのかを明らかにすることは、困難である。したがって、実際に成長に資するような政策については、今回の緊急経済対策には盛り込まれないだろう。その代わりとして、「新型コロナウイルスの感染拡大が終息に向かうなどした段階でさらなる経済対策を準備する」といった姿勢を示すにとどまるとみられる。

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