生徒を自殺に追いやる「スパルタ部活」の深い闇 「逃げ場のない状況」が子どもの心を摩耗する

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これなどは世界の誰が見ても「いい話」だと思います。生徒の才能に惚れた指導者が、生徒を褒めて褒めて才能を伸ばす。最初から最後まで「君は将来NBAの選手に……」と言い続けたことが才能ある八村選手からさらなる才能を引き出したのでしょう。部活というとシゴキにばかりに目がいきますが、「褒めて伸ばす」指導者もいるということはもっと知られていいかもしれません。

さらに、八村選手が「ハーフ」であることに配慮した指導を行っていたこともいい結果につながりました。八村選手は中学校の後に宮城の明成高校に進学しますが、ここのバスケ部の佐藤久夫監督は前述の坂本コーチと定期的に電話で連絡を取り合い、八村選手について相談することもあったそうです。

興味深かったのが『週刊新潮』に載っていた坂本コーチの発言。「佐藤監督とは電話でよくやり取りをしていましたが、あるとき、八村の生活態度について相談されたので、“彼の心”の半分はアフリカなのです〟と言ったことがある。あまり日本式の枠に当てはめないほうがいいんじゃないか、という意味です」坂本コーチは、八村選手のバスケ以外の生活面ではもっと「自由」を認めてあげるのがいいのではないかと間接的に伝えたわけです。

カツアゲの濡れ衣で傷ついた八村

八村選手には過去に「カツアゲの濡れ衣」を着せられた辛い体験があります。通っていた中学校に「背が高くて色が黒い子がカツアゲをした」とゲームセンターから連絡があり、八村選手の母親が学校に呼び出され、カツアゲの濡れ衣を着せられそうになりましたが、後に真犯人はサッカー部の日焼けしたほかの子だということが判明しました。

また、中学校時代に急速にバスケが上達したことで一部の親からヤッカミを受け、なんと味方の席から試合中にブーイングを浴びたと言います。このときばかりは母親も気が滅入り、八村選手にバスケをやめさせようとしたそうです。

カツアゲの濡れ衣を見てもわかるように「黒人とのハーフである」ことを理由に酷く扱われ、心に傷を負った八村選手に対して、もしもバスケの指導者が「スパルタ指導」をしていたら、部活をやめていた可能性も高いと思います。八村選手は才能があるうえに、指導者にも恵まれたことは本当に幸運でした。彼に合う方法で指導してくれた坂本コーチと出会えたことは八村選手にとってはまさに「奇跡」でした。

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