イタリア、スペインと感染急拡大の欧州事情 第一生命経済研究所の田中理氏の分析

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――ECB(欧州中央銀行)は政策パッケージを出してきましたが、その直後の市場の反応は良くなかった。

つなぎオペの追加実施、貸出を増加した銀行に優遇金利を適用する長期資金供給オペであるTLTROの第3弾の条件緩和、資産買い入れの一時的な増額と3つ出してきた。想定内だったが、資産買い入れの増額幅は1200億ユーロと大きかった。注目されたマイナス金利政策におけるマイナス幅の深掘りは回避された。

FRB(米連邦準備制度理事会)が0.5%ポイントの利下げを行っても、市場は好感しなかったので、ウイルスを金融政策で退治できるわけではないということが明らかだから反応が良くなかった、とはいえる。ただ、今回の決定が失望を招いたのは、ラガルドECB総裁の不用意な発言が大きかったと思う。

イタリア国債のスプレッド拡大を受けてのOMT(各国国債の直接買い入れ)の発動の有無を記者から問われて、「スプレッド縮小はECBの役割ではない」と答えてイタリア国債利回りの上昇を招いた。また、前任のドラギ総裁が欧州債務危機のときに「ユーロ防衛のためにはいかなる措置も行う」と答えた発言になぞらえて、「これはあなたにとっていかなる措置も行う局面か」と質問されたのに対しても、否定的に答えた。

ラガルド総裁の不用意な発言でイタリア国債の利回りは一時1.9%を超えた。利回り上昇は中小企業の資金繰りを直撃する。弁護士・政治家出身で、金融政策の専門家ではない経験不足を露呈してしまった格好だ。

財政での対応が中心に、イタリアの信用力は悪化

――今後はどのような政策対応が出てくるのでしょうか。

EUは今回の新型コロナウイルスに対する景気対策としては、「一時的」な財政規律の弛緩を認めているので、イタリアの延長線上で、各国は同じような対応をしてくるだろう。資金繰り支援、困窮している人への補助金、税・光熱費・住宅ローンの支払いの免除などだ。

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ただ、すべて政府が補填するということなので、財政が悪化していくことは確かで、イタリアのようなそもそも財政の悪化している国は信用力が問題となる。イタリアは現在S&PでBBB、ムーディーズでBaa3だが、格下げは避けられず、投機的格付けに転落するおそれがある。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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