実は世の中、簡単そうに見えて簡単には答えが出ない問題がたくさんあります。数学でいうフェルマーの最終定理みたいなやつです。
という一見簡単そうに見える数学の問題ですが、証明されるまでに360年もの時間がかかった数学史上最大の難問のひとつです。偉大な数学者たちがそれぞれ違ったアプローチで360年間、少しずつ証明方法を検討していったその積み重ねの結果、最終的に解が見つかった。証明したのは数学者のアンドリュー・ワイルズですが、解決アプローチ全体でみれば分業したからこそ360年で解決したともいえるのです。
そしてこれほど難しくなくても「一見簡単そうに見えて簡単ではない問題」は実は多いのです。最近のコロナウイルスの例でいえば「増産したマスクを薬局で正常に買えるように流通させるには」とか「感染を拡大させずに経済への影響を極小化するための自粛方法」とか「医療崩壊を起こさない前提でPCR検査をどの優先順位で行うか」といった連日議論されている問題は、それぞれ簡単に見えて、実は簡単には解けない問題ばかりです。
そしておそらくとけないまま時間切れで国が決めたり、逆に決めなかったりするので、マスクがなくなったり、経済活動が縮小したり、検査されないまま放置された感染者が出たりしています。
難しい問題には分散アプローチが向いている
こういった問題はどう取り組むのが本当はいいのかというと、ここで冒頭の分散アプローチが実は向いているのです。あくまでアイデアとして申し上げますが、コロナの中で最近問題となっている「医療崩壊を起こさない前提でPCR検査をどの優先順位で行うか」の問題を例にとってみると、実は「47都道府県に一定期間(たとえば2週間)権限移譲して、それぞれやり方を変えてみて、それで最適解を模索する」という方法がありえます。
たとえばA県では希望者を先着順で全員検査する、B県では高熱の人を優先する、C県では高齢者で肺炎を起こしている人を優先するといった具合にそれぞれの都道府県が「これが最適ではないか?」と考える方法でまず対応してみるのです。そのうえでたとえば2週間後に、検査能力という制限と、感染者の収容能力の制限のふたつの条件の中で最適に医療がまわっている都道府県のやり方を全体で採用するという方法です。
もし「現時点ではS県のやり方が最適だ」とわかれば全国一斉にその方法に切り替える。その後「感染が拡大してきたのでむしろY県の方式に変えたほうがいい」となれば、フェーズが変わったことを理由にY県方式に切り替える。
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