コロナショックでタクシー運転手が上げる悲鳴 稼ぎ時の夜は「自粛」で利用者減、対策も急務

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名古屋最大の繁華街である、錦や栄でも同じような惨状だった。この町に飲みに来る男性客は目に見えて減少し、女性キャストやスタッフの利用も圧倒的に減ったという。栄を拠点に働くドライバーが言う。

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「夜の仕事をされている方からの売り上げは、かなり多くの割合を占めます。ただ、今は自粛、自粛でお店を一時休業したり、営業時間の短縮などで夜の錦や栄はほぼ死んでいる。最近1人、名古屋から岐阜の大垣辺りまで乗せてほしい、という仕事上がりの女性がいたんです。

料金でいうと2万円ほどの距離で、高いですけどよろしいですか?と聞くと、『電車に乗るより安全なので。買えるなら安心をお金で買いたい』というふうに話していたのが印象的でした。

体が資本だけに、過敏になっている方も多いのでしょう。女性がお金を使ってくれることで、この町の経済は活性される。女性たちの動きが限定的な現状からみるに、しばらくはこの悲惨な状況は続くでしょう」

コロナウイルスにより大打撃を受けたタクシー業界にとって、いまだ回復の糸口は見えない。そして、町の活気を示す1つの指標でもあるタクシードライバーたちの生活は、想像しうる以上に厳しい状況に立たされていることは留意すべき問題だ。

タクシードライバーの人生をより深堀り

本稿に続き、次回からはタクシードライバー1人ひとりの人生に焦点を当てたルポを定期的にお届けしたい。

コロナショックで打撃を受けるタクシー業界だが、タクシードライバーは非常に興味深い職種だ。彼らに聞けばその地方の景気の流れや、街の変化、うまい飯屋などすべてがわかるといっても大げさではないだろう。初めて訪れる地域では、タクシーは単なる移動手段としてだけではなく、心強いナビゲーターでもある。

そして、車中で交わす何気ない会話は、訪れた場所を色づけていく。目的地に着き車から降りると、そのほとんどが風化されて記憶にとどまらないであろう、ドライバーとの数十分の記録をつづっていきたい。

彼らはどんな人生を歩み、タクシードライバーという職種に行き着いたのか。老若男女から外国人まで、ドライバーたちが明かすタクシー業界の実情、おもしろ乗客とのエピソードや、移りゆく土地の変化に、人生の悲哀―。東京を中心とした日本全国から、時には海外まで、一期一会の物語を切り取り届けていく予定だ。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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