「何も決まらない会議」には"推論"が欠けている "思考の背景"を共有すれば激変する

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「自分の意見」と「推論のはしご」をセットで共有することで、会議の参加者全体の思考の広さと深さが劇的に変わる。全員の知恵を集めたうえで議論できる状態になるからだ。また、各自の立場やプライドなどにもこだわることなく意見を変えやすくなり、そのときどきの最適解に近い意思決定が可能になる。

「推論の根拠」のチェックは必須

「推論のはしご」には、もう1つメリットがある。それは、「思考の背景」の確認ができることだ。

人は自分の考えを、必ずしも事実に基づいて、発想しているわけではない。噂や情報の真偽がわからないのに「こんな話を聞いた」「こんな情報が報道されていた」というだけで判断の根拠にしてしまうことも多い。

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どのような情報に基づいて、どのように考えたのか、それぞれが根拠や前提を共有することで、考える背景が間違っていないかどうかのチェックにもなる。

もし間違った情報や、真偽が疑わしい情報をもとに「推論」されて出された結論であれば、かなり危ういと言わざるをえない。そのようなことが発覚した場合には、たとえ時間を多く要しても、その会議では「次回までに、事実を確認するという作業をきちんとやったうえで、もう一度議論をやり直しましょう」というように結論を出したほうがいいくらいだ。

そもそもディスカッションは、会議において最も重要な行為である。しかし、効果的に運用している会社は少ない。何時間も同じような話をだらだらと繰り返し、議論が広がらず、深まってもいないのに時間が迫ると採決で決めてしまいがちだ。結論らしきものは出るかもしれないが、それが適切な解かどうかは怪しい。

会議におけるアウトプットの価値を最大化する意味でも、どの会社も、ディスカッションの質を高めるための訓練をきちんと行うべきなのである。

松岡 保昌 モチベーションジャパン代表取締役社長

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まつおか やすまさ / Yasumasa Matsuoka

人間心理にもとづく経営戦略、組織戦略の専門家。1986年同志社大学経済学部卒業後、リクルートに入社。『就職ジャーナル』の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。2000年にファーストリテイリングにて、執行役員人事総務部長として当時の急成長を人事戦略面から支える。その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長を歴任。2004年にソフトバンクに移り、ブランド戦略室長としてCIを実施。福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役として球団の立ち上げを行う。

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