「何も決まらない会議」には"推論"が欠けている "思考の背景"を共有すれば激変する

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1.~4.のうち、とくに重要な点が2つある。

1つ目は「相手の意見の背景を理解しながら議論を進める」ことだ。それぞれが考える結論だけを言い合っても、結局は声の大きい人、役職が上位の人の意見で決まってしまいがちだ。

当人たちはディスカッションのつもりでも、まるでディベートのようになり、異なる意見を批判し合うような情景もよく見かける。批判したり、責めたりしてもいい結論にはたどり着かない。組織における意思決定では、説得力を競い合う前に、まずは、そう考える「根拠」を理解し合うことのほうが優先されるべきである。

「推論のはしご」を共有する

変化の激しい昨今、ビジネスには絶対的な正解などありえないなかで、最適解に近づけなければならない。そのためにも、みんなが考えていることのすべてを共有して、そのうえで最適解として合意できる解を出していくプロセスが重要になる。

そのときに必要なのが「推論のはしご」である。これが重要なポイントの2つ目だ。「推論のはしご」とは、人がどのような事実や事象、情報から、どのような推理・推論を行い、最終的な意見や結論に行きついたのか、そのプロセスをいう。「推論のはしご」とはどういうことなのか、1つのわかりやすい事例をもとにイメージしていただきたい。

2組の夫婦が、ほぼ同時に同じ場所に引っ越してきた。それぞれの夫婦がふと窓から外を見ると、道端で近所の奥さんたちが井戸端会議をやっている。それを見て、Aさん夫婦の会話は次のようなものだった。

Aさん妻:「ねえねえ、あなたちょっと見て。このあたりの奥さま方が井戸端会議をしているわよ」
Aさん夫:「あの、ちょっと体格のいい人が、このあたりを仕切っているみたいだね」
Aさん妻:「ということは、あの人にうちのことを知られると、あることないこと言いふらされるかもしれないから、あの人と付き合うのは慎重にしたほうがいいわね」
Aさん夫:「確かにそうだね。噂話のネタにされるかもしれないのは嫌だし、尾ひれがついて広がると怖いからね」

Aさん夫婦の結論は「このあたりを仕切っている体格のいい女性と付き合うのは慎重にする」、つまり「積極的には付き合わない」となる。

今度は、同じシーンを見ているBさん夫婦の会話だ。

Bさん夫:「ちょっと見てごらん。あの体格のいい人がこのあたりを仕切っているみたいだよ」
Bさん妻:「あら、本当ね。ということは、娘をどの塾に通わせるのがいいか、あの人が情報をいちばん持っているのではないかしら」
Bさん夫:「そうだね。あの人に相談に行くのが早くて確実そうだから、さっそく明日菓子折りでも持って、あいさつに行ってみようか」
Bさん妻:「そうね。賛成。そうしましょうよ」

Bさん夫婦の出した結論は「積極的に付き合う」となる。

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