2030年以降、どの国も「負け組」になりえる理由 気候変動が最悪シナリオで進めば混迷は必至だ
気候変動の「勝ち組」と「負け組」
シンガポールの建国の父、リー・クアンユーは「エアコンは20世紀最大の発明の一つ」と言って、エアコンへの格別の思い入れを口にしたものである。熱帯のメガポリス、シンガポールが“アジアの首都”と言われるまでに栄えたのも、エアコンなしには考えられない。
エアコンが発明されたのは、1902年、ガソリン自動車とほぼ同じころである。しかし、それから1世紀を経て、自動車と同じようにエアコンもまた最大の挑戦に直面している。
これからの10年、世界に出回るエアコンの数は、過去1世紀分とほぼ同じ数になると予測されている。しかし、エアコンの数が増えれば増えるほど、地球温暖化を進めてしまう。そうなると、人々はもっとエアコンを使う。悪循環である。(The Economist, August 25─31, 2018)
過去半世紀、奇跡の発展を遂げたシンガポールそのものからして、今世紀半ばには気候変動によって生存的危機を迎えるかもしれない。
ムーディーズ・アナリティックスの「気候変動の経済的意味合い」と題する報告書(Moody’s Analytics)によれば、気候変動が続くと、農業の生産性と労働者の健康と生産性に悪影響を及ぼす。重要インフラの機能と不動産の価値を毀損する。海面上昇によって、沿海の都市と島国に脅威を与える。再生可能エネルギーへの転換に伴って石油への投資は低下し、石油価格は低下する。亜熱帯地域では、冷房需要が一段と強まり、電気需要が高まる。
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