③隠ぺい、恫喝……、報道管制があるのかも
さらにひどいのは、外部からさまざまな指摘を受けても政府は自らの非を認めないことだ。菅義偉官房長官や加藤勝信厚生労働大臣の言い訳は、多数派を握る国会や従順な記者クラブでは通用しても、国際社会では通用しない。
しかも感染症対策のような、はっきりと数字になって現れてくる事態ではごまかしようがない。
神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授が体を張って内部告発をすれば、寄ってたかって圧力をかける。自民党の医療族の重鎮が、専門家でもないのに「ああいう形で告発するのはけしからん」と恫喝する。
さらに、首相の記者会見ではあらかじめ用意された原稿を読んで、あらかじめ用意された質問者の質問に対してさっさと終わらせる。あのアメリカのトランプ大統領でさえ、用意されていない質問に延々と答えるシーンをよく見かける。文字どおり、日本にはすでに事実上の「報道管制」が敷かれているのかもしれない。
④明日は昨日と同じと考えているメディアの体質
実は、こうした報道管制の本質は大手メディアにあるのだが、旧民主党時代までの大手メディアの政権に対する姿勢は厳しいものがあり、形のうえでは公正さを保っていた。しかし、現在の大手メディアは安倍政権に完全に掌握されてしまった感がある。
今や、記者クラブに加入している大手メディアは、新型コロナウイルス感染に限らず、すっかり政府の広報と化している。この姿勢はいったいいつまで続けられるのか。きちんと政権と対峙する姿勢を取り戻すよい機会なのだが、残念でならない。
この状況を放置したら、国民の多くが大手メディアの報道する内容を信用しなくなってしまう。お笑いなどのエンターテインメントだけでは、ごまかしきれない日がやがてやってくるはずだ。いずれにしても、今の大手メディアが正確な情報を国民に知らせているとはとても思えない。そんな状況の中からフェイクニュースやデマが飛び交う社会になってしまう。
安倍政権がほかの政権と違う点
安倍政権やそれを支える自民党の危機管理のなさは、おそらく今後も続くことになるはずだ。安倍政権がほかの政権と違う点は大きく分けて2つある。簡単に説明すると――
1. 官僚の人事権を把握
周知のように現在の官僚機構は、2014年に「内閣人事局」が創設されて、内閣府が各省庁事務次官などの人事権を掌握している。それまでは官僚機構の中で実績を残した優れた人間が最終的なトップに上り詰める組織だったのが、安倍政権になってからは安倍政権に気に入られる人間だけがトップに就くシステムになってしまった。
厚生労働省、法務省そして検察機構に至るまで、政権に忖度する姿勢が貫かれている。その結果、今回のパンデミックのような緊急事態に対応できる人材も、組織も、システムも、脆弱になってしまったことが挙げられる。
安倍政権が誕生して間もなく8年だが、このシステムが新型コロナウイルス感染拡大に対応しきれていない最も大きな原因の1つと言っていいだろう。本当に優秀な人間がトップに立てる組織でなければ緊急事態には対応できない。
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