このリスクマネジメントがきちんとできていて初めて危機管理ができる。今回の新型コロナウイルスの感染拡大でわかったことは、安倍政権がリスクマネジメントを怠ってきた可能性が高いということだ。リスクマネジメントは、政府の最も重要な仕事の1つだ。
国民を感染症から守るといった危機管理は、企業の危機管理と原則的に同じと考えていいだろう。ここ数年、企業の不祥事が数多く重なったが、そのときの対応のよし悪しで、企業イメージが大きく変化してしまうことは、われわれもよく知るところだ。同様に、危機管理のなさは政権のイメージを著しく傷つけ、国民に失望感を与える。
例えば、企業でも記者会見の対応のまずさがあると「炎上」のきっかけとなるケースがよくある。最近では、大学アメフト部の不祥事や大手芸能プロダクション社長の記者会見などは、まさに大学や企業のイメージを大きく毀損してしまった。
危機管理に必要な3条件
ちなみに、企業の危機管理では次の3つが要求されると言われる。
2. 正確で迅速な情報公開
3. 誠意ある真摯な対応
例えば、ある外食産業が転売した食材をリサイクル業者が勝手に不正転売した事件では、不正転売の事件をすぐに警察に通報し、その会社に直接の責任はなかったのだが、素早く対応してメディアに正確で迅速な情報を流し、不正転売された食品を食べないようにとアナウンスした事件があった。
このスピーディーな対応は「神対応」と言われて高く評価されたが、そのときにポイントになったのは、リスクに対して「誰をどういうリスクから守ればいいのか」が明確に認識されていたことだと言われる。
そのためには、やはりキチンと普段からリスクマネジメントを通して「被害者は誰なのか」を明確にしておく必要がある。
現在の政府やそれを支える与党にこの認識があるかどうかを問いたいところだが、古今東西、政治家には難しい質問なのかもしれない。いずれにしても、今回の感染症対策では、明らかに安倍政権の“危機管理”のなさが際立っている。
例えば、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、国民が最も不信に思っているのは、なぜ日本は中国や韓国のようにスピーディーなPCR検査ができないのか、という点だろう。真偽のほどは定かではないものの、感染者数を小さく見せるために政府が恣意的に検査を妨害しているのではという疑念を抱かせている。
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