新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が打ち出した小中高校や特別支援学校などの臨時休校が3月2日から始まった。あまりに唐突な決定で、日本の教育現場は大混乱。ほとんどの学校が、まったく準備期間を与えられず、決められたカリキュラムを終わらせることも、期間中の生徒の勉強体制を構築することもできないまま、休校にせざるをえなかった。
一方で、日本にあるインターナショナルスクール、さらに一部の日本の学校においては、さっそくICT(情報通信技術)を使った遠隔でのリモートラーニングが始まっている。日本の教育現場におけるICT導入の絶望的な遅れによって子どもたちの貴重な教育の機会が奪われていることが、こうした非常時に白日の下にさらされている。リモートラーニングの現場に密着し、その可能性と早急な対策の必要性について考えてみたい。
YouTubeを見ながら体育の授業
東京都品川区在住の斎藤翔くん(仮名、12歳)。普段通うインターナショナルスクールが始まる朝8時半から、自宅の2階の居間でパソコンに向かった。1時間目はPE(体育)の時間だ。送られてきたメールを開くと、YouTubeなどのビデオへのリンクが並んでいる。リンクをクリックして、ビデオに合わせて、ウォームアップのラジオ体操、ワークアウト、クールダウンなど合わせて35分ほどの運動を行うように指示された。
2時間目は社会科の授業。Googleなどのシステムも利用して、クラスメイト30人余りがリアルタイムにビデオチャットでつながる。画面の中央に映し出された先生が生徒たちに呼びかけた。「今日はエジプトについて勉強します。その前に、まず、みんなの好きな曲について教えてください。そして、どうしてそれが好きなのか、5分間で、作文してください」。画面上にはストップウォッチが表示され、カウントダウンされていった。
5分が過ぎると、次々と生徒たちが発表をし、その生徒の動画が大きく映し出される。生徒たちは自由にコメントをタイプし、それが画面に映し出され、先生や生徒の発言内容もすべて瞬時に自動的に書き起こされ、画面に表示されていく。その後は、先生の講義に従って、授業は進み、生徒たちは手元にあるプリントやノートにその内容を書き込んでいった。
最後の時間は算数だ。ビデオで解説を受けた後に、クイズ形式で問題に答えていく。結局この日は午後2時に授業は終了した。
実は、学校側は休校が決定する1週間以上から、こうしたリモートラーニングを検討し始めていた。翔くんの兄と姉が通う別のインターナショナルスクールからも、「すでに遠隔学習の準備を始めている」とのメールが2月の第1週目に保護者のもとに送られてきている。
結果的に、3人とも、休校後すぐに家でしっかりと授業を受けられるようになった。母親の由美子さん(仮名)は「今のような状況では、子どもたちが出かけることもままならず、こうしたシステムがあるのは非常にありがたい」と胸をなでおろす。
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