「妻が夕食の時間までに帰宅できたときは、家族そろって夕食を摂りますし、お風呂や寝かしつけは妻がやってくれます。休みの日は家族で買い物に行ったり、電車好きな息子のために電車を見に出かけることもありますが、ただひたすら休んでいる日もあります」
そんな生活を可能にしているのは、大森さんの会社にある、短時間勤務制度のおかげ。どちらかというと、大森さんより奥さんのほうがバリバリ働きたいタイプなので、大森さんが短時間勤務制度を利用することにしたのだ。
ほとんど主夫のような生活を2年ほど繰り返していた中での、突然の父親の脳梗塞だった。
期間限定の3世代同居
父親の左半身に残ったマヒは、リハビリのかいもあり、つえをつけばゆっくりだが歩けるところまで回復している。
「マヒすると左半身が硬くなってしまい、思うように動かないのが本人はつらいし、リハビリは痛いみたいです。硬くならないように、理学療法士さんや作業療法士さんが力を加えて曲げてあげるリハビリがあるのですが、父は、『早く治したい』という気持ちが強かったようで、つらくても痛くても、毎日真剣にリハビリに取り組みました」
倒れてから約半年。ついに父親は、リハビリ病院を1カ月後に退院し、自宅へ戻ることになった。しかし自宅に戻ると、これまでは毎日3時間リハビリの時間が設けられていたが、週2回、各1時間ずつに激減してしまう。リハビリが減ることで、父親の運動能力が低下してしまうことを恐れた大森さんは、退院後も自分がリハビリに付き添えるようにと思い、父親のリハビリに立ち会い、理学療法士や作業療法士からリハビリのコツを学ぶことに。
「リハビリは、見るのとやるのでは全然違います。人の足はすごく重いのですが、資格保持者は軽々と動かしているように見えるんです。父が倒れるまで理学療法士や作業療法士という仕事を知りませんでしたが、人々の生活を支える、すばらしい職業だと思いました」
現在大森さんは、両親との期限付き同居を計画している。退院までに自宅に父親を受け入れる体制を整えるため、福祉用具を入れるなど、実家の改修工事を進行中だ。
「退院後の父が、新しいライフスタイルを構築するところを、一緒にやっていきたいと思いました。父はまだ、歩けるようになったと言っても、健常者の2分の1程度の速度でしか歩けませんし、左手はほとんど握力がなく、右手の補助的に動かせる程度です。入浴には介助が必要ですし、何より、小さな母では大きな父を支えられません。自宅での生活に慣れるまで、私が力になりたいと両親に申し出ました」
当初母は、「お互いに気を使うのが嫌だ」と同居に反対。奥さんも同じ理由で反対した。そこで大森さんは、「期限付きではどうか」と提案。すると「期限付きなら……」と、母も奥さんも納得した。実は、父親が倒れる前から「自分の家が欲しい」と考えていた大森さん。そのため、新居購入までの同居を提案したのだった。
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