元ソニー69歳エンジニア、DMMに飛び込んだ訳 技術顧問として生み出すイノベーションとは
阿部さんがその時提案したのは、かつてほとんどの日本の家庭に常備されていた清涼剤「仁丹」を使うという驚くべきアイデアだ。
阿部さん:直径2㎜のボールと聞いて、思わず「仁丹があるじゃない!」と叫んでしまいました(笑)。でも、2人の顔を見るとポカンとしていて。
紗季さん:私もダンも、「仁丹」を知らなかったんです(笑)。だから私たちがあれを思いつくわけがなかった。阿部さんだからこそ閃いたアイデアだったと思います。
ダンさん:「ドラッグストアに売ってるはずだから見ておいで」って言われて、慌てて仁丹を買いに行きました。阿部さんが英語で「ミント」っていうもんだからてっきりフリスクみたいなものかと思って、ザーッといっぺんに食べてみたら、あまりに苦くてさすがに“So Bad!”って叫びましたけど(笑)。
世代を超えて「ものづくり」の楽しさを分かち合える
「年齢差は気にならない」と口をそろえる3人。お互いが意識しているのは、「相手を認める・受け入れる」ことだという。
紗季さん:相手を認める、相手に認めてもらう努力をする必要はあります。そのために私はは「言うべきことは言う」ことを大切にしていて。
互いのバックグラウンドや生き方を尊重し、自分のこともわかってもらうために、「暗黙の了解」みたいな言語化されていないルールはつくらないし、相手が阿部さんだったとしても自分の考えをはっきり言う。そのほうがお互いに誤解なく進められるし、それがなければこんなにいい関係性はつくれなかったと思いますね。
ダンさん:僕は、いい意味で「辛抱強く付き合う」ことを心がけていますね。人ってそれぞれ得意なことや不得意なことは違います。自分は簡単にできることでも、ほかの人にとっては難しいことかもしれない。それを嫌だとか相手に無理強いするのではなく、お互いの違いを認めて補完し合う姿勢を大事にしています。
阿部さん:確かに、相手に無理に苦手を克服させないことって、意外と大事なのかもしれません。自分と他者がまったく同じなんてありえないですから、お互いを理解しながら着地点を見つけて解決していくほうがいいですよね。
今後、シニア世代がエンジニアリングの現場に入ることはまずまず増えていく。そうなったときに、お互いの良いところを生かし合うのか、それともお互いが「扱いづらいな」とわかり合うことを放棄するのか。それによって成果物の精度は大きく変わるだろう。
阿部さん:僕に経験があるからといって「アドバイスしてあげてる」なんてことは思いません。僕が彼らから学ぶこともたくさんあるし、あくまでよいプロダクトを作るためには何ができるのか、お互いのよいところを持ち寄っているという感じ。これからもお互いの「楽しむ気持ち」を大切にものづくりに携わっていきたいですね。
年齢に関係なくものづくりを楽しめるのは、エンジニアの特権だ。3人を見ていると、そう思わずにはいられない。お互いの違いを受け入れ、楽しみながらものづくりに取り組むこと。幅広い世代の知見と強みがうまく生かされたとき、“想像”もできないようなイノベーションが生まれるはずだ。
(取材・文/石川香苗子 撮影/竹井俊晴)
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