元ソニー69歳エンジニア、DMMに飛び込んだ訳 技術顧問として生み出すイノベーションとは
紗季さん:こういう知識って、ググって出てくるようなものではありません。まさに阿部さん自身が長い年月をかけて、失敗したり悩んだりしながら導き出した経験則。こういう知識や経験を分けていただけるのって、本当に貴重なことだと思います。
一方、阿部さんは『PLAYFOOL』の2人を見ていて、その行動力や発想力に刺激をもらっているという。とくに、難易度の高いことにも果敢にチャレンジする彼らの姿勢にはいつも驚かされている。
阿部さん:私が彼らから学ぶこともたくさんありますよ。例えば、彼らは失敗しても諦めずに、さまざまなプロトタイプを作る粘り強さがある。徹夜で作業している姿をよく見るので、若さを羨ましいなと思うこともあります(笑)。2人のチャレンジ精神、クオリティーに妥協しない姿勢は見習いたいですね。
ピンチを救った“年の功”
取材中も、フランクな会話で盛り上がる彼らだが、祖父と孫ほど年が離れている。ジェネレーションギャップが開発を進めるうえでの壁になったことはないのだろうか?
ダンさん:よいプロダクトを作るための技術を基点にながっていれば、年齢も性別も、国籍もまったく関係ないと思います。これは阿部さんのキャラクターによるところもあるのかもしれませんが、プロダクトや技術の話に夢中になると時間を忘れて盛り上がってしまうし、阿部さんがいなかったらできなかったプロダクトばかりですよ。
紗季さん:阿部さんは経験も技術力も豊富だから、困っていたら細かく説明しなくてもすぐわかってくれる。ただの年上の人、というより私たちにとってはレジェンドみたいな感じ。パッと部品を見せたり、「これ、どうしよう」ってちょっと声をかけるだけで、力になってくれるところもすごいなと思います。
阿部さん:ものづくりという共通言語がありますから、世代の違いは障壁にはなりませんね。お互いの役割を担っているだけ、という印象です。
紗季さんとダンさんも「年齢差は気にならない」と話すが、「阿部さんの‟年の功”によって助けられたことはたくさんある」と続ける。
その1つとして、極小のボールが必要になった時のことを教えてくれた。
紗季さん:レールの上を、直径2mmのボールが転がるプロダクトをつくりたかったんです。でもサイズが合うボールがどうしても見つからなくて。慌てて秋葉原の街へ出てベアリング屋さんを探し歩いたんですけど、一番小さくてもラジコン飛行機用。サイズが大きいものしかなくて途方に暮れていたら、阿部さんがジャストなアドバイスをくれました。