「花粉症に苦しめられる日本人」が知るべき基本 「エビデンス不足」の中でどう対処すべきか

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今年も花粉症シーズンが始まりました(写真:colors/PIXTA)

多くの報道が新型コロナウィルス感染で持ちきりの中、ひっそりと花粉症の時期が到来し、これからピークを迎えようとしています。

花粉症とコロナウィルス感染は、全く関連のない話題とお考えかもしれませんが、実はそうではないかもしれません。例えば、花粉症の症状が強い方は、汚染されたつり革を触った手で、繰り返し目を擦ってしまうかもしれません。新型コロナウィルスは、結膜からの感染の可能性も指摘されています。

花粉症の方は、花粉症の予防や治療をしっかり行い、症状を抑えることが感染予防のためにも重要なのです。

その花粉症ですが、「エビデンスで紐解く」という連載タイトルでありながら、残念ながら実は花粉症の治療や予防には良質なエビデンスがあまり存在しません。

その理由には、花粉症が比較的日本に固有の病気だから、という側面もあるかもしれせん。残念ながらこれまでの日本には、良質なエビデンスを構築する仕組みも専門家も不足してきたのです。

それでもいろいろなところから知恵をお借りし、エビデンスが不足しているという事実を明らかにしながら、この花粉症について紐解いていければと思います。

花粉症と肥満細胞

この連載の過去記事はこちら

花粉症は、さまざまな植物の花粉に対して生じるアレルギー反応のことです。

この花粉症のうち、日本国内では約70%がスギの花粉症だと考えられています。その原因には、国土に占める森林の割合が世界でもトップクラスであり、人工林の中でスギ林の占める割合が最大だから、という事実があります。

実際、アメリカやヨーロッパなどほかの地域ではそもそもスギがほとんど分布しておらず、スギ花粉症はめったに見られません。例えばアメリカではブタクサの花粉症が代表的ですが、それでも日本ほどの罹患(りかん)率はありません。

これは、日本で、戦後復興として人工林の大量造林を行った「拡大造林政策」とその後の国内需要の低下により残された、密集したスギ林の「副作用」と考えることもできます。

こういった背景から、日本ではもはや花粉症が国民病になりました。

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