「武漢のリアル」配信した中国人2人が行方不明

強まる言論の自由への欲望と中国政府の圧力

武漢で新型コロナウイルスによる肺炎が拡大している状況を動画で撮影し、それをインターネットに流した2人が現在、行方不明になっている(写真:ロイター)

ベージュのワゴン車が、ある武漢の病院の前に停まっている。サイドと後ろのドアが少し開いている。地元で衣料品を販売する方斌氏は、そのワゴン車の横を通り過ぎるとき、中を覗いてみた。「たくさんの遺体があった」と方氏は苦しそうな声を出す。5つ、6つ、7つ、8つ。遺体を入れた袋が8つあった。「こんなにたくさんの人が亡くなっている」

方氏はこのとき、新型コロナウイルスによる肺炎が拡大している状況を40分間撮影して投稿し、ネット上の有名人になった。しかし、それから2週間も経たないうちに、方氏は姿を消した。

その数日前、別の有名な動画ブロガー、陳秋実氏も行方不明となった。陳氏の友人や家族は、陳氏が強制的に隔離されたようだと話した。

一般市民が感染の実態を投稿

2人は姿を消す前に、武漢で何十本もの動画を撮影してインターネットに流した。新型肺炎流行の中心地からの悲惨な映像だ。病院の外に続く長い列、衰弱している患者、悲しむ家族たち――。

その映像が特に衝撃的だったのは、それが中国の内側から発せられたものだったからだ。中国では政権を少し批判しただけの内容でも、すぐにインターネットから削除され、それを公開した者はたいてい罰せられる。

2人の動画が注目を集めたことは、中国に独立した報道機関が不足していることを反映している。中国では、一般の新聞は当局に厳しくコントロールされている。中国共産党中央宣伝部は、今月はじめ数百人のジャーナリストを集めて、新型コロナウイルスの報道の仕方を改めて確認した。

しかし、2人の動画は、中国でここ数週間、言論の自由への要求が高まっていることを反映してもいる。

新型肺炎の危機によって、中国中の思いがけないところから、批判や内省の声が出ている。複数の報道機関が、新型肺炎の流行について、辛辣な報道をするようになった。また、医師の李文亮氏が亡くなると、政府の検閲に対して中国のソーシャルメディアで抵抗が起こった。李氏は武漢の医師で、政府が新型肺炎の流行を公表する前に、警告を発していた人物だ。

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