仕事のできない人は「アート」の価値を知らない 正解、利便性、失敗の持つ意味が変わった

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市場原理は必ず「普遍的な問題」から順に解消していくことを求めるからです。問題をビジネスとして捉えた場合、「問題の深さ」は単価に、「問題の広さ」は顧客数として計量されます。市場規模が「単価と顧客数の積」になる以上、市場は「深くて広い問題」、つまり「普遍的な問題」に「正解」を提供していくことを求めます。

これを順繰りに繰り返していけば、やがて「普遍的な問題」の多くが片付いた状態となる一方で、市場に残っているのは「深いけど狭い問題」か「広いけど浅い問題」のどちらかになります。

これだけ製薬会社が莫大な開発投資をしているにもかかわらず、難病の多くが手付かずのままになっていますが、なぜそういうことが起きるかというと難病のうちの多くが希少疾病だからです。希少な疾病を治癒させる画期的な新薬が作れたとしても、市場としておいしくないから開発に対して前向きになれないわけです。

さて、このようにして「普遍的な問題」があらかた解消してしまうと「正解」を提供する能力が今度は過剰供給されることになります。経済学の基本原則に則れば「過剰なもの=正解」の価値はデフレし、「希少なもの=問題」の価値がインフレすることになります。

「優秀さの定義」が変わってしまった

これはつまり「優秀さの定義」が、かつての「与えられる問題について速く、正確に正解を出せること」から、今後は「誰も気づいていない新しい問題を発見・提起できること」にシフトするということです。アート的な思考を「未知のB地点(領域)にたどり着くこと」と定義すれば、つねに「新しい問題」を探すことがそこにもつながります。

では、どのようにすれば「新しい問題」を見つけることができるのでしょうか? 私なりのキーワードで頭出しをしておけば、それこそが「美意識」ということになります。みんなが当たり前だと思っていることに対して「何かがおかしい、美しくない」と思える審美的感性、さらには時代感覚や世界観に基づいて「本来はこうあるべきではないのか?」をイメージし、それを他者に伝えられる力が求められる、ということです。

そもそも「問題」とは何でしょうか。それは「あるべき姿と現在の姿」とのギャップのことです。これはつまり「あるべき姿」を構想する力、現状を批判的に眺める態度を持たない人には「問題」を発見することも提起することもできない、ということです。

そして「あるべき姿」を構想し、現状を批判的に眺めるということを人生の生業としてやっているのがアーティストと呼ばれる人たちなのです。ここに「アート的な思考がビジネスの世界にも求められる」理由の1つがあります。誰もがクリエーティビティーを秘めたアーティストである、そう著者は語り、それらをビジネスにどう落とし込んでいくかという「HOWの問い」に答えていきます。

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