仕事のできない人は「アート」の価値を知らない

正解、利便性、失敗の持つ意味が変わった

「WHY」と「HOW」で考えていく必要があります(写真:alphaspirit/iStock)
3Mのポストイット、Gメール、ピクサーアニメ――。0→1を生むアート思考とは、ひらめきが宿る「余白」を創出することだった。
イノベーションの重要性が問われるようになった時代に必要なのが、「成果や評価、環境、才能、失敗、リスクというビジネスの実質的な限界を飛び越える“アーティスト思考法”」と説く、エイミー・ウィテカー氏の著書『アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術』より、山口周が担当した「まえがき」を抜粋して掲載する。

アートとビジネスの関連について考えるとき、必ず向き合うことになる「2つの問い」があります。その問いとはすなわち「なぜアート的な思考をビジネスに盛り込む必要があるのか?」という「WHYの問い」と、「どのようにしてアート的な思考をビジネスに盛り込むことができるのか?」という「HOWの問い」です。

今日のビジネスにおいて、なぜアート的な思考・行動様式が求められるのか。大きく3つの理由があると思います。

正解の価値が大きく減損した

1つ目の理由として挙げたいのが「正解の無価値化」です。現在、昭和から平成の初期にかけて大きな価値を持っていた「正解」の価値が大きく減損している一方で、逆に「問題」の価値が大きく高まっています。昭和の中期から後期にかけて、世の中には多くの「問題」が満ちあふれていた一方で、その問題に対して「正解」を出せる組織や人材は少なく、結果的に「正解を出せる人」の価値が大きく高まりました。

私たちは「正解を速く正確に出せる人」を「優秀な人材」と考える強い傾向がありますが、それは「問題が過剰で正解が希少な社会」において形成された一種のバイアスなのだということを忘れてはなりません。

具体例で考えてみればわかりやすい。例えば、社会科の授業で習った昭和中期の「3種の神器」というのはすなわち、電気冷蔵庫、電気洗濯機、テレビという3つの家電のことですが、これらが「神器」と言われるまでに渇望されたのは、そこに普遍的な「問題」が存在したからです。その問題とはすなわち「家の中で食べ物を保存できない」「手作業での洗濯がとてもつらい」「家の中に娯楽がない」という問題です。

しかし今日の社会においては、このような普遍的な問題はほとんど解消されてしまっています。なぜだと思いますか?

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