天下分け目の11月

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プロゴルファー/小林浩美

 秋も深まって、女子ツアーも残すところあと2試合。エリエール女子オープンで、来年のシード権がほぼ決まる。なぜなら、最終戦はメジャーで、今年の優勝と賞金ランキング上位25位までの選手しか出場できないからだ。

先日、『80対20の法則』(リチャード・コッチ著)という本を読んだ。内容は、「投入、原因、努力のわずかな部分が、産出、結果、報酬の大きな部分をもたらすという法則である。例えば、あなたが成し遂げる仕事の80%は費やした時間の20%から生まれる。つまり、費やした時間の80%は、わずか20%の成果しか生まない」。また、「原因と結果、投入と産出、努力と報酬には、必ず不均衡が生じるというのが、80対20の法則である」と書いてあった。
 その中の例え話で、「ゴルフの賞金の80%を、20%のゴルファーがかっさらっていく。競馬の賞金の80%が、20%の馬主、騎手、調教師の懐に入る」と。確かに女子ゴルフの賞金配分は、賞金全体の18%が優勝者、50位タイまでの人が賞金をもらえる。その上位20%である10位までの人たちに全体の56・8%が分配されている。

女子プロゴルファーの会員は現在800名を少し超える。そのうち、試合に出たいと思ってトーナメント部門に登録している人は、約400名。レギュラーツアー、または下部ツアーのステップアップツアーに出られる人は、1試合ごと、それぞれに108名ずつ。レギュラーツアーに常時出場できるのがシード選手。これは賞金ランキング上位50位までの選手を指す。
 また、シード選手と同等の扱いをされるのがQT(クォリファイングトーナメント)合格者。試合に出るための試合がQTと呼ばれるもので、ファイナルステージまで4段階の勝ち抜き戦。その中の上位30人くらいが来期の試合にほぼ出られる。
 400人以上のトーナメント希望者の中で、次年度の仕事(試合)の権利を確保できる人が50人+30人で80名。なるほど20%だ。その中で、今年優勝している人は、現在16名。これまた20%。優勝者のうち、複数回優勝している選手は4名。これもだいたい20%。試して数字を出してみたものの、当てはまる部分が多いのにビックリした。ただ、この4人で29試合中17勝を占めている。シード選手の10%程度の選手が試合の50%以上で勝っていることになる(どれも10月25日現在)。

エリエール女子オープンで、来期のシード選手がほぼ決まる。シード権から漏れた人は、12月のファイナルQTを受けにいく。QTの上位で通過できなかった人たちは、試合にほとんど出場できない。出場できなければ来年1年間どんな仕事をして収入を得ようかと考えなければならない。
 シード権確保を目指すプロにとって11月は天下分け目の季節なのだ。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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