子供のころから、他人にものを教わることが苦手だった。生まれつきの天の邪鬼なのか、まずは先生の言っていることを疑ってしまう。数学や物理学など数式であらわすことができるもの以外には、真実はないのではないかと思っていた。おかげでITバブルでは踊れなかったし、ウィンドウズ・ビスタも導入しなくてすんだ。
ところが、ゴルフのレッスンではまじめにコーチの言うことを聞いている。教え方も内容も論理的だからだ。埼玉県の「おおむらさきゴルフ倶楽部」で開講している「ダンロップゴルフスクウェア」がそれだ。
毎回のレッスンは一日がかりだ。朝9時に集合し、まずはストレッチをしたあと、室内練習場でボールを打つ。それを前後2台のカメラで撮影したものを、主任プロがパソコンを使って図解し、改善の指導をする。最初の数回はポスチャーの修正だけだった。
たとえば「もう少し上半身は右に傾けて、お尻は気持ち左に」という感じだ。これをテレビ画像抜きにやってみることは至難の業だ。普通ではどこまで傾けてよいかわからないし、わかっても再現性がない。
さらに、このレッスンではプロの指導のあとに、隣の部屋で続けて1人で練習することができる。隣の部屋にも前後2台のカメラがあり、大きなテレビモニターもある。そのモニターに自分の数秒前の画像が映る。つまり自分の直前のショットをなんの操作もしないで見ることができるのだ。この装置を打ちっぱなし練習場に導入すれば、行列ができるであろう。
その後は、コース付設のバンカー、アプローチ、パター練習場でお昼まで練習することになる。お昼を食べてから、屋外ドライビングレンジで存分に打ったあと、ハーフのラウンドレッスンとあいなる。生徒4人にプロ1人がつく。
このレッスンのよいところは20回前払いであるというところかもしれない。仮に1回目のレッスンでゴルフを完全に体得し、プロ並みにコースを回れるようになったとすると、あと19回はレッスンを受ける必要はない。つまり教える側のインセンティブは、また来てもらうことではなく、もう来なくてもよくなるようにすることだ。
そのためにはレッスンプロはトップクラスでなければならないようだ。ヘッドプロの竹中和美氏にその条件を聞いてみたところ、まずはゴルフがうまいことが必須条件だとのことだ。竹中氏自身も180センチメートルを超える長身から300ヤード近いショットをレッスンで繰り出してくる。
もう一つ条件がありそうだ。プロコーチの3人ともが実にイケメンなのだ。元ジャニーズでしたと言われても、信じてしまうかもしれない。これこそが、家内のほうが熱心に通う理由でもある。
1955年北海道生まれ。アスキーなどを経て、91年マイクロソフト日本法人代表取締役社長。2000年に退社後、投資・事業開発コンサルティングのインスパイアを設立。趣味はジャズレコード収集やプラモデルなど多数。無類の読書家としても有名、書評も多く手掛ける。
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