ついに動き出した電子マンガ「中古売買」の成算 ブロックチェーンで業界のタブーを解消?
電子書籍では、コンテンツデータを売買しているわけではなく、ユーザーは購入先の電子書店との間でコンテンツの閲覧、表示など使用権の許諾を受ける形が一般的。そのため電子書店がサービスを停止した場合は、購入済みの電子書籍が読めなくなることもあった。
これに対してメディアドゥHDは、ブロックチェーンを使ってすべての取引履歴を記録しデータを永久保存することで、電子書店が閉鎖された場合もユーザーを保護する仕組みを構築。電子書籍に対する消費者の不安を軽減することで、市場のさらなる拡大につなげることを目指している。
「ブロックチェーンはデータを分散管理するために信頼性が高く、すべての履歴が残るために改ざんができない。暗号資産との親和性も高いため海外展開も見込める」(メディアドゥHD)と説明する。
また、このブロックチェーンを活用した流通システムで技術的に可能になるのが、電子書籍の2次流通(中古売買)だ。
同社の藤田恭嗣社長は2019年10月の中間決算説明会で「2次流通市場ができることで、新刊の購入が増えてマーケットの拡大につながると考えている。フリマサービスの浸透で2次流通市場が確立されている分野では、使い終われば売ればいいと気軽に購入する消費者が増えている」と発言。フリマアプリ「メルカリ」の登場でリユース品市場が拡大したように、業界全体の活性化につなげたい狙いを示した。
メディアドゥHDは1700以上の出版社との取引口座を持ち、電子書籍を提供する出版社のほぼ全社と取引実績がある。電子書店側では150店以上と取引実績があり、AmazonのKindleストアなど、ユーザー利用率の高い電子書店の大半と取引している。
電子書籍ならではの問題点
インプレス総合研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書2019」の試算によると、電子書籍取次を経由しない出版社直営の電子書店を含めた電子書籍(電子雑誌含まず)の2018年度の市場規模は2826億円。同年度のメディアドゥHDの流通総額は950億円と3割超を占め、業界トップとなる。
ただ、電子書籍の2次流通には懸念もある。紙の書籍の場合、ページが折れ曲がったり汚れがつくなど、中古は新品に比べて物理的に劣化する。しかし、電子書籍は中古でも実質的には新品と変わらないため、価格の安い中古ばかり売れるということにもなりかねない。
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