富野由悠季「ガンダムで伝えたかった」熱い信念 監督が作るロボットアニメは伊達じゃない!
富野由悠季監督は現在78歳。昨年秋に劇場版『GのレコンギスタⅠ 行け!コア・ファイター』が公開されたのに続き、2月21日からは劇場版第2作『GのレコンギスタⅡ ベルリ撃進』の公開も控えている。また『富野由悠季の世界展』も島根県立石見美術館で開催中で、同展覧会は今年も各地を巡回する予定だ。1970年代からおよそ半世紀にわたって監督として第一線を走ってきた富野監督とは、はたして“何者”なのか。
「逆襲のシャア」の卓越した演出力
言うまでもなく富野監督はまず、明確なスタイルを持った演出家である。富野演出の手際のよさをコンパクトに体感するなら、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)の冒頭10分を見るとよい。
キャラクター同士の会話を使い、観客を現場に立ち会わせるかのように映画の中に導いていく導入から始まり、画面の上手と下手を巧みに使って画面内の情報を整理して伝えながらストーリーは進んでいく。例えば本作の実質的主人公である少女クェス・パラヤは、映画の序盤では下手から上手へと進んでいくキャラクターとして描かれている。
地球を背景に置いて、モビルスーツに乗った主人公アムロとライバルのシャアが向かい合うカットも重要だ。「この映画はアムロとシャアが地球の行く末をめぐって戦う作品である」ということを、ビジュアルとして映画序盤に端的に示しているのだ。しかも戦闘シーンでは各機の動きを通じて、3人のキャラクター(主人公アムロ、ライバルのシャア、シャアの部下のギュネイ)のパイロットとしての技量も同時に浮かび上がらせている。
また富野監督は、世界をまるごと創出することができる作家でもある。人類がスペースコロニーへの宇宙移民を実現した未来社会「宇宙世紀」は、『ガンダム』シリーズの根底となっている。
日本にハイファンタジーが普及する以前の1983年には、中世風の社会である異世界「バイストン・ウェル」を創造している。今や一般的に、「触れられたくない過去」を指す「黒歴史」という言葉も、もともとは『∀ガンダム』で「歴史の中で忘れ去られ、封印されていた過去の戦乱の記憶」を指す言葉として作られた言葉だ。