山寺宏一「同業者から見ても凄い」圧倒的な実力

銭形警部から犬まで演じ分ける「七色の声」

声優は、実は声の良しあしだけではありません。声優・山寺宏一さんを通して見えてくる、演じる姿勢のすごさとは?(写真:Jun Sato/WireImage/Getty Images)  
昔と違って、最近は地上波のテレビ番組に出ることも珍しくなくなった「声優」という仕事。声優業界に憧れる若者は多くいますが、いったいどんな世界なのか? 
今回は「声優・山寺宏一の実力」について、フリーザやばいきんまんなど数多くの人気キャラクターの声を担当する中尾隆聖氏が上梓した新著『声優という生き方』から抜粋して紹介します。

設定情報の多い少ないは別として、声優が役づくりをするにあたって、とくに経験の少ない人が陥りがちなのが、役に合わせて「声をつくってしまう」ことです。

例えばおじいちゃんの役だったとすると、しわっしわの声にして、「わしはのう」なんて言ったりする。それだと「おじいちゃんなんだな」と思われても、単なるステレオタイプな記号でしかありません。おじいちゃんにもいろいろあります。

温厚な人もいれば、怒りっぽい人、背筋がピンとしている人、性別がわかりにくい人、早口な人、無口な人。こういう人物であるから、こういう口調にする、とならなければいけない。

まず必要なのは「役づくり」

「声をつくっただけでやった気になるな」というのはよく言っています。まず芝居があって、そこに必要な声を出すという順序でないとなりません。だけど、声優志望の人たちは「声をつくること」で役づくりを終えてしまいがちです。

この仕事をしていると、声優というのは「いろんな声が出せる人」と世の人々に思われているんじゃないかと感じることがあります。もちろん、山寺宏一さんのように「七色の声」といわれるような声帯を駆使した声の達人はいます。

しかし、彼であっても演技においては声をつくるのは二の次でしょう。まず役をつくってから声をつくる。声をつくらなくても、口調やトーンで人物は演じ分けられます。

しかし、「ばいきんまんにそれを言われても、いまいち説得力がない」、というのが困ったところです。実際、ばいきんまんはものすごく「つくった声」なんです。

それこそ初期の頃は「このままじゃ声が潰れる」と思うくらい、無理な声の出し方をしています。若いうちに声帯を酷使してしまうのもよくありません。野球で言えばストレートを投げられるようにしてから変化球を投げろということです。

次ページ山寺宏一はなぜすごいのか?
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 就職四季報プラスワン
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • 今見るべきネット配信番組
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
地銀 最終局面<br>首相が追い込む崖っぷち

遅々として進まなかった地銀再編。しかし菅義偉首相は明確に踏み込みました。全国の地銀はどう動くのか、現状を徹底取材。今後起こりうる地銀再編を大胆予測。さらにビジネスモデルや行員の働き方にも注目し、地銀が生き残る道について探りました。

東洋経済education×ICT