山寺宏一「同業者から見ても凄い」圧倒的な実力 銭形警部から犬まで演じ分ける「七色の声」

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さきほど述べた「ガヤ」ですが、セリフの少ない若手や新人がやるようなイメージがもしかするとあるかもしれませんが、誰でもできる簡単なものかというと、実はそうでもありません。実際はベテランも若手も関係なくやりますし、「経験の差」やセンスが如実に表れやすいのです。

とくにセリフは決まっていませんが、なんでもいいわけではもちろんなく、状況をきちんと理解して適切なことを言わなくてはいけません。

交通事故で通行人や野次馬が集まって、「どうした? どうした?」となるシーン。驚いたり、こわがったり、興味本位だったり、だいたいここまでは想像できます。ただ、若い人ばかりだとおんなじようなことばかり言っていて厚みが出ないことがあります。ベテランが入るとそこが全然違ってくる。

とあるベテランが、そこでやっていたのは警官。野次馬がいるんだから、それを現場に近づけないように制止する警官は当然いるだろうと考えて勝手にやっているのです。はっきりと絵に描かれていなくても、それが入るだけでガヤの質がぐっと上がる。そういう発想が自然と出てくるかどうかも役者としての技量です。

山寺宏一が人気者になれた理由

山寺さんはそこでも違いを生み出す男です。私は彼がデビュー間もない頃から『それいけ!アンパンマン』で共演していますが、実は彼もばいきんまんのオーディションを受けていました。もう、いまだったら間違いなく山寺さんです。彼は結局、めいけんチーズの役で参加することになりましたが、カバおくんや、かまめしどんなど、別のキャラクターも複数担当しています。

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カバおくんは、アンパンマンの世界では小学校にいる子どもたちの1人です。話によっては子どもたちがたくさん集まるガヤもあります。そこでやはり、ほかの子よりも印象的でした。おぼっちゃま風のしゃべり方も彼のアイデアでした。

音響監督もそういうのを見ています。あんまりいいので、どんどんカバおの存在感が出てきて、大勢の中の1人から独り立ちできるくらいのキャラクターになっていったのです。

ガヤだろうが小さな役だろうが、彼がやるとキャラがいきいきと存在感をもちはじめる。そういうことができるから、いまこれだけの人気者になったんだと思います。ですから、声質でとくに有利も不利もないし、個性は個性としてもちながら芝居をすればいいし、演じながらキャラクターをつくりあげていくことだってできるんです。

中尾 隆聖 声優

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なかお りゅうせい / Ryusei Nakao

東京都生まれ。3歳で児童劇団に入団。5歳で文化放送のラジオドラマ『フクちゃん』のキヨちゃん役でデビュー。第25回日本映画批評家大賞“アニメ部門最優秀声優賞”、第11回声優アワード“富山敬賞”を受賞。1992年より関俊彦とともに劇団「ドラマティック・カンパニー」を主宰する。

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