富野由悠季「ガンダムで伝えたかった」熱い信念 監督が作るロボットアニメは伊達じゃない!

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表層的なチープさが抜きがたくあっても、作品自体の骨格がしっかりしていれば、アニメはそうした普遍性を獲得できるはずだ。そこには「貧しく見えるTVアニメであっても、オレは使いこなしてみせる」という演出家・作家の自負が垣間見える。そしてその自負の目指す先が「自作を通じて現実を把握する力を鍛えてほしい」ということなのだ。

『逆襲のシャア』の中に「ならば、今すぐ愚民どもにその叡智を授けてみせろ」というシャアの台詞が出てくる。これはもちろん、今すぐにはできない、という逆説として発せられていて、とてもニヒリスティックな響きがある。これに対してアムロも、あまり有効な反論はできていない。

アムロと重なって見える富野監督

富野監督はしばしば、その言動や存在感をシャアと重ねて語られることが多い。『逆襲のシャア』の、シャアの中にあるニヒリズムは富野監督の一部であるのだろう。

だが、創作に関して振り返ってみれば、富野監督は「アニメというエンターテインメントを通じて、人々に叡智を授けたい」ということをコツコツと続けてきており、そういう意味では、あたかも「今すぐ愚民どもにその叡智を授けてみせろ」という台詞に対するアンサーを実演してきたともいえる。

その姿勢はむしろ「νガンダムは伊達じゃない!」の台詞を皮切りに、奇跡の突破口を開いた『逆襲のシャア』のアムロと重なって見える。「ロボットアニメは伊達じゃない」と、「アニメで世界を救う」ということをまじめに考えているのが、富野監督という存在なのである。

藤津 亮太 アニメ評論家
ふじつ りょうた / Ryota Fujitsu

1968年生まれ。東京工芸大学芸術学部アニメーション学科非常勤講師。執筆のほか、朝日カルチャーセンターでの講義なども手がける。主な著書に『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ぼくらがアニメを見る理由 2010年代アニメ時評』(フィルムアート社)など。Twitter:fujitsuryota

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