対中輸出「解禁」で変わる日本産牛肉の存在感 日本産牛肉の輸出先TOPが「カンボジア」の謎

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年々、海外で人気が高まっている日本産の牛肉だが、輸出先として、なぜカンボジアがトップなのだろうか?(写真:keiphoto/PIXTA)

少子高齢化が急速に進み、人口減社会の厳しい現実が迫るニッポン。食の世界もマーケットが縮小し続けている。コメの消費量(国民1人当たり年間)は、1962(昭和37)年度の118kgをピークに減り続け、2018(平成30)年度は半分以下の53.8kgになった。食生活の変化もあるだろうが、全体のパイが縮小する中で、食料の国内需要は確実に落ちていく。

一方で、世界的な和食ブームもあり農林水産物・食品の輸出が伸び続けている。政府は「2020年度輸出額1兆円」を目標に掲げて輸出強化に取り組み、2018年は輸出額が前年を12.4%上回る9068億円に達した。

2019年は伸びが鈍化したため、目標達成は困難との見方が強いが、2019年1~11月期の実績を見ると鶏卵の43.3%増(金額ベース=前年同期比)、ブリの40.1%、牛肉の22.0%など高い伸びを示す食品も少なくない。

食の輸出実態はどうなっているのか。あまり知られていない食料品の輸出の内情と今後の可能性をレポートしたい。1回目は今年、中国向け輸出が解禁される見込みの牛肉の実態を探った(輸出量、金額は財務省貿易統計)。

カンボジア国内の“牛肉事情”

国際的な人気を誇る世界遺産・アンコールワットで知られるカンボジア。人口約1600万人で15歳未満の子ども人口の割合が3割超。日本(同12.5%)とは正反対の“若い国”である。近年は縫製業、製靴業、建設業、観光、農業が経済を牽引し、年間7%を上回る高い経済成長を誇っている。若年人口が多い高度経済成長国として世界的にも注目を集めている。そのカンボジアが2018年、日本の牛肉輸出先トップに躍り出た。

日本の牛肉輸出量(2018年)は3560トンで前年比31.5%増。金額ベースでは247億3100万円で前年比29.1%増となっている。輸出金額はここ3年で2倍以上という急激な伸びである。このうちカンボジア向けの輸出量(2018年)は786トンで全体の22.1%、金額ベースでは56億3600万円で全体の22.8%を占めた。

2017年まで首位だったグルメ王国・香港を数量、金額ともに上回ったのだ。2019年も1~11月累計で約1021トン、76億4713万円で香港を大きく引き離してトップである。

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