対中輸出「解禁」で変わる日本産牛肉の存在感 日本産牛肉の輸出先TOPが「カンボジア」の謎

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中国では、2017年にアメリカからの輸入が14年ぶりに解禁され、2018年にはフランス、セルビアからの輸入も始まった。そして2020年には日本からの輸入が再開される可能性が高まり、日本国内の畜産業者からは「待ちに待った輸出再開」「人口も多く富裕層も多いので輸出は順調に伸びるのではないか」といった期待の声が挙がっている。

輸出拡大に向けた畜産関係者のこれまでの努力も見逃せない。1990(平成2)年の対米輸出を皮切りに、宮崎牛の輸出に取り組んできた「ミヤチク」(宮崎県都城市)は「令和元年度輸出に取り組む優良事業者表彰」で農林水産大臣賞を受賞した。

宮崎牛としてブランド化

種雄牛まで指定し、宮崎生まれ宮崎育ち、肉質等級4等級以上の黒毛和牛を「宮崎牛」としてブランド化し、2018年はアメリカ、台湾、香港、シンガポール、カナダ、マカオ、タイ、フィリピン、モンゴル、EUに向けて約300トンを輸出。

輸出金額は12億3900万円に上る。宮崎県全体の輸出量約470トンの6割超を占めている。同社は直販営業に力を入れ、国内で6店舗経営しているレストランの料理長が販売代理店の営業マンに同行して海外の納品先のシェフに、おいしく食べるためのカット法や調理技術を指導してきたほか、県やJA関係者らとアメリカやアジアでトップセールスを展開してきた。

2019年にはEU基準対応の新工場を稼働させ、EU向け輸出をスタート。EU向けの調理方法も開発している。ミヤチクだけでなく日本各地でブランド牛生産地の関係者が、それぞれのスタイルで輸出拡大に向けた取り組みを展開中なのである。

中国向け輸出が解禁されれば、やがて輸出先ナンバー1に中国が躍り出ることは間違いないだろう。世界の年間牛肉消費量は5967万トン(2017年)。最大の牛肉輸出国はブラジルで約183万トン(2019年)。日本の輸出量はわずか3560トンにすぎない。世界の食通の舌を魅了する日本産和牛の出番は、まさにこれからである。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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