対中輸出「解禁」で変わる日本産牛肉の存在感 日本産牛肉の輸出先TOPが「カンボジア」の謎

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海外では、日本産和牛の遺伝資源を入手したオーストラリアの飼養家が生産に成功したオーストラリア「WAGYU」が広く流通しているが、本家の日本産和牛はまだまだ特別な存在のようである。

2020年は牛肉輸出にとって大きな転換期となりそうだ。まずは1月1日に発効した日米貿易協定。輸入ではアメリカ産牛肉の関税が38.5%から段階的に9%に引き下げられる一方で、輸出では日本産牛肉の低関税枠が引き上げられる。

具体的には従来は年間200トンまでは1キログラム当たりの関税が4.4セントで、超過分は26.4%の関税がかかっていたが、今年からは複数国枠(6万5005トン)へのアクセスが可能となったため低関税枠が大幅に拡大する。このため和食人気の高いアメリカ向けの輸出量(421トン=2018年)が大幅に増える可能性がある。

さらに大きなインパクトを与えると見られているのが対中輸出の解禁だ。日本国内でのBSE(牛海綿状脳症)発生以降、2001年から中国は日本産牛肉の輸入を禁止してきた。その流れが変わろうとしている。昨年11月の日中外相会談で、日中両政府が輸出再開に必要な畜産物の安全性に関する協定に署名。手続き面での協議を踏まえて、2020年中にも日本産牛肉の輸出が解禁される見通しとなっている。

早期解禁に意欲

昨年12月には中国の孔鉉佑駐日大使が宮崎県都農町にある牛肉加工施設「ミヤチク都農工場」を視察。孔大使は「宮崎牛を含む、日本の農業製品が1日も早く中国の消費者の食卓に届くように誠意ある努力をしていきたい」と語り、早期の解禁に意欲を示した。当然ながら、国内の畜産関係者の期待感は高まる一方だ。

なにしろ中国の市場は巨大である。牛肉の総消費量は2006年の574万トンから2017年には793万トンへと増加している。アメリカの1205万トン(2017年)に次ぐ、世界第2位の牛肉消費大国なのである(国民1人当たりでは5.7キログラムとまだ少ない)。

牛肉の輸入量も右肩上がりで増え続けている。2007年に3640トンだったのが、2010年に2万3650トン、2013年には29万4223トンに拡大。2018年はついに106万1627トンと100万トンを突破。爆発的な増加ぶりだ(データは中国税関統計年鑑など)。

2018年の輸入先の上位(金額ベース)は①ブラジル、②オーストラリア、③ウルグアイ、④アルゼンチン、⑤ニュージーランドで、ブラジルからの輸入金額は15億ドル超となっている。

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