対中輸出「解禁」で変わる日本産牛肉の存在感 日本産牛肉の輸出先TOPが「カンボジア」の謎

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年々、海外で人気が高まっている日本産の牛肉。いったい、どんな人たちが、どういった食べ方をしているのか。プノンペンにある日本人経営レストランのメニューをネットで見てみると、「和牛カルパッチョ」「和牛すし」「和牛照り焼き」「和牛サンドイッチ」「和牛煮込み」「A5和牛リブステーキ」などがある。

利用者の声を拾うと「和牛のシャトーブリアン(100グラム・88ドル)とランプ(100グラム・32ドル)を頼んでみました。とてもおいしかったです。お値段はプノンペンでは最高級です」と記されていた。プノンペンでは、「日本産和牛」は在留邦人や富裕層向けの特別な料理なのだろう。

輸出先2位・香港の事情

輸出先2位のグルメ王国・香港の事情はどうなっているだろうか。JETRO香港事務所が2019年1月から2月にかけて、日系牛肉輸入販売企業(A社)と焼き肉レストラン(B社)に行ったインタビューの内容が興味深い。

●好まれる料理

「焼き肉、和牛を使ったチャーハン。最近、肩ロースの売り上げが伸びている。食べ放題の火鍋に使われているようだ」(A社)

「ステーキ、焼き肉、火鍋が好まれる。火鍋は暑い夏でもエアコンをがんがん効かせた部屋で食べる」(B社)

●日本産和牛の受け止め方

「牛肉の中でも最高品質のものと考えられている。他国の牛肉とはまったくの別物だ」(A社)

「和牛の品質の高さは皆知っているところだ。鹿児島、宮崎など生産量も多く、距離的に近い九州の和牛を使うことが多い」(B社)

●どういった人が食べているか

「大金持ちは日本に行って食べる。ミシュランの星が付くような店は別にして、普通の人たちが食べている」(A社)

「30代の女性やカップルなど中所得者層の人たちが多い。お客の8割が香港人、1割が日本人、残りがそれ以外」(B社)

●和牛を食べるのはどういったときか

「結婚、クリスマス、バレンタインなど何かの記念日が多い」(A社)

「イベント、誕生日など。焼き肉店のため、月2回くらいで来店するというのがほとんど」(B社)

香港での日本産和牛消費の実態が浮かび上がってくるような内容だ。課題についての回答もなるほどと思わせるものだ。

「価格の高さは問題ではない。オーストラリア産和牛のM9(霜降りの割合が最高級)が580~600香港ドル(8120~8400円)、日本産和牛のA3(最高級はA5)が700~1000香港ドルと、それほど差がなくなってきている。F1交雑種はオーストラリア産和牛よりも安い」(A社)

「来客される方は、高い価格の和牛をごちそうとして食べに来るのではないか。価格が安くなったとしても、売り上げが伸びることはないだろう」(B社)

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