牛肉の「輸入制限」が発動された本当の理由 14年ぶり発動だが、関係者はいたって冷静
牛丼や焼き肉チェーンで使われる米国産の冷凍牛肉の関税率が、この8月から上がった。政府がセーフガード(緊急輸入制限)を発動したためだ。
セーフガードとは特定の農産物などの輸入量が急増した場合に、一時的に関税を引き上げて国内生産者を保護する措置。牛肉では、輸入量が前年度四半期の117%を超えた場合に機械的に関税が引き上げられる。
今年4~6月期の米国産冷凍牛肉の輸入量が増えたため、今回14年ぶりの発動となった。ただ、発動は“僅差”だった。発動には該当国からの輸入量に加え、牛肉の輸入量全体が117%以上に増えることが必要だが、今回輸入量全体は基準値に対してわずか113トン、伸び率にしてたった0.1%上回っただけだった。
なぜ、このような結果となったのか。改めて原因を探っていこう。
中国”犯人説”だけでは無理がある
輸入量の伸びた理由として挙げられるのが、中国による米国産牛肉の輸入解禁だ。中国はBSE(牛海綿状脳症)発生で停止していた米国からの輸入を6月に再開した。「中国の買い付けを見越して、前倒しで輸入した会社があった」(農林水産省畜産部)。
中国の輸入再開をめぐる思惑で、今年に入ってから米国産牛肉が値上がりしたのは確かだ。ただ、中国の「爆食」を恐れた先回り買いで、輸入の増加を説明し尽くすことは難しい。
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