対中輸出「解禁」で変わる日本産牛肉の存在感 日本産牛肉の輸出先TOPが「カンボジア」の謎

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高度経済成長が続いているとはいえ、カンボジアにそれだけの牛肉需要があるのだろうか。1つのニュースに注目したい。2019年10月、外務省が国連世界食糧計画(WFP)を通じてカンボジアに3億5000万円の食糧援助を行うと発表した。

WFPを通じて、地方の約22万人の小学生に対し魚の缶詰を提供するというのである。高度成長が続く一方で、内戦時に埋められた地雷の影響もあり農業生産基盤が不十分で、慢性的な食料不足だという。日本の牛肉を大量に消費できるような環境とはとても考えにくい。

首都プノンペンの状況はどうか。人口は約200万人。「カンボジア日本人商工会」の会員は198社(2019年7月現在)で、在留邦人は約3500人。

そば、うどん、寿司をはじめとする日本食を提供する店も増えている。その中には焼き肉屋やステーキハウスもある。

2019年にオープンした和牛を提供する高級和食レストランのFacebookには、日本から輸入した鹿児島牛のA5ランクの肉がアップされていた。大阪に本店がある焼き肉店は2012年に進出。日本人だけでなくカンボジア人にも人気の店となった。JETRO(日本貿易振興機構)の調査では、カンボジアには約190店の日本食レストランがある(2018年)。

カンボジアのスーパーマーケットに和牛はない?

一方でアジアらしい光景も見られる。地元の人々が買い物をするマーケットでは国内産の牛の枝肉が吊るされ、売り手が大きなまな板の上で塊をカットして販売している。現地在住の方に日本食品を販売しているスーパーを3軒ほどを回ってもらったが、オーストラリア産の牛肉は売られていたが、日本の牛肉はどこにも見かけなかったという。

調べていくと、複数の過去記事から“謎”が解けた。日本から輸出された牛肉が、カンボジア経由で日本産牛肉が輸入禁止となっている中国に流れていたようなのだ。

カンボジアの市場の様子(筆者提供)

2018年12月30日の時事通信の記事によると、〈いったんカンボジアに輸出された日本産牛肉は「カンボジア産」の表示がある箱に入れ替えられ、ベトナムなどを経由し、中国の上海や深圳に送られているという〉とある。

同様の記事は早いもので2012年以降いくつか散見される。2015年にはカンボジア経由で中国国内に日本の牛肉を搬入し、販売していた業者が上海市公安局などに摘発されている。業界関係者の間では「牛肉輸出 カンボジアがトップ」の“謎”は旧知のことだったようだ。

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