東大理Ⅲ4人合格させた母の揺るぎない教育法 子が小さい頃に得た感性はずっと支えになる

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ところが、それは頭で考えるほど楽なことではない。子どもは2歳にもなると動きが早くなり、好き勝手に行動するものだからだ。

そのため怒りたくなってしまったこともあったと振り返るが、そんなときには「3歳までは」と自分に言い聞かせ、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。そしてそののち考えたのは、「ダメ」という言葉を使わずにやめさせるためには、どんな言葉を使えばいいのかということ。

そこで、「なぜいけないのか」についての理由を、言葉を尽くして具体的に説明することにしたそうだ。例えば、「ここで走ると人とぶつかって迷惑だし、転んで危ないから」というように。

その時期に佐藤氏は、「修行僧のような気持ちで子育てをした」そうだが、3年の修行を続けた結果、自分の感情をコントロールできるようになり、それがのちの子育てに大きく役立ったという。

「育児は育自」とよく聞くが、3年間をすごす中で、その言葉の意味を実感したというのだ。

そこまで到達できれば、子どもという生き物がどのようなものなのかが理解できるようになり、お母さんも次第に腹が据わって忍耐力がつくのではないか。だとすれば最初の3年間は、母親になるための修行期間。しかし発見することも多く、面白い3年になるはずだと佐藤氏は述べている。

根本的な感情は後づけできない

成長していくに従って、子どもは「国語の点数が取れない」「読解力がない」「本に興味が持てない」などの壁に直面することになるはずだ。しかし、そんなときこそ、3歳までに培った人間としての根本的な感情が意味を持つものである。

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根本的な感情とは、説明しなくてもわかる気持ち、何も言わなくても通じ合える感情、目と目で通じ合えることなど。しかもそうした感情は、なかなか後づけできないものでもある。したがって、柔軟な3歳までに、そうした側面を養っておかなければならないというのだ。

大学受験の記述式問題でも、そうした感情抜きで正しく解答することはできないだろう。そういう意味でも、3歳までのしっかりとした土壌が重要だということである。

もちろん受験がどうという以前に、自分の力で歩いて行ける人間に育ってもらうためにも。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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